
日本版DBSでは、子どもと接する業務に従事するスタッフについて、性犯罪の前科の有無を確認する「犯罪事実確認」が行われます。ただし、確認の対象は、こども性暴力防止法で「特定性犯罪」として定められた性犯罪の前科に限られます。
この記事では、施行ガイドライン(令和8年9月改訂)とQ&A(令和8年9月29日改訂)をもとに、特定性犯罪とは何か、どのくらい前の前科までが確認の対象になるのか、そして事業者が誤解しやすいポイントを図表で整理します。
- 確認の対象は、法律で定められた「特定性犯罪」の前科だけです。
- 子どもに対する罪だけでなく、成人に対する性犯罪も含まれます。痴漢や盗撮など、条例違反も対象です。
- 対象になる期間は、拘禁刑の実刑で20年、執行猶予と罰金刑で10年です。
- 不起訴や示談で刑に処せられていない事案、性犯罪以外の前科は対象になりません。
- 前科がないことは、安全の保証ではありません。日々の予防策と両輪で進めます。
特定性犯罪とは?対象になる罪
特定性犯罪は、こども性暴力防止法第2条第7項で定められた刑法等の罪と、都道府県の条例で定める罪のうち政令で定めるものを指します。主なものは次のとおりです。
| 根拠となる法律 | 主な罪 |
|---|---|
| 刑法 | 不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ・監護者性交等、16歳未満の者に対する面会要求等、強盗・不同意性交等 など |
| 児童福祉法 | 児童に淫行をさせる行為 |
| 児童買春・児童ポルノ禁止法 | 児童買春、児童買春の周旋・勧誘、児童ポルノの所持・提供 など |
| 性的姿態撮影等処罰法 | 性的な姿の盗撮、その画像の提供・保管・送信 など |
| 都道府県の条例 | 迷惑防止条例の痴漢・盗撮・卑わいな言動、青少年健全育成条例の未成年者に対するみだらな行為(いわゆる淫行) |
法律が改正される前の罪名(強制わいせつ、強制性交等など)で処罰された場合も、確認の対象になります。また、子どもに対する罪だけでなく、成人に対する性犯罪も含まれる点に注意が必要です。
何年前までの前科が確認の対象になる?
特定性犯罪の前科であっても、一定の期間を過ぎたものは確認の対象外となり、確認結果は「非該当」として通知されます。期間は刑の種類によって異なります。
| 刑の種類 | 対象になる期間 | 数え始める日 |
|---|---|---|
| 拘禁刑の実刑 | 20年 | 刑の執行を終えた日など |
| 拘禁刑の全部執行猶予 | 10年 | 裁判が確定した日 |
| 罰金刑 | 10年 | 刑の執行を終えた日など |
確認の対象になるものと、ならないものを整理すると次のとおりです。犯罪事実確認は「性犯罪に関係するすべての情報」を調べる制度ではないということを、正しく理解しておく必要があります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確認の対象になる | 上の期間内にある、特定性犯罪の前科(成人が被害者のものを含む) |
| 確認の対象にならない | 期間を過ぎた前科 示談などで不起訴となり、刑に処せられていない事案 窃盗など、特定性犯罪以外の罪の前科 |
確認はいつ行い、結果はどう届く?
子どもと接する業務に従事する人については、雇入れや配置転換の際に確認を行い、その後も5年ごとに確認することとされています。
確認の結果は「犯罪事実確認書」として交付されます。書式は令和7年12月25日付の官報に掲載されています。交付の申請から交付までは、原則として「こども性暴力防止法関連システム(こまもろうシステム)」上で行い、交付された確認書は、原則としてシステムの画面で見るだけになります。誰がどの端末で確認書を見るのかなど、社内での取扱いをあらかじめ決めておくことが大切です。
確認結果は、本人にとって極めて機微な情報です。認定事業者には、特定性犯罪の前科等の情報を適正に管理するための「情報管理措置」が求められ、情報管理規程の整備は認定申請の添付書類にもなっています。見られる人を限定する、確認の目的以外に使わない、保存や廃棄の方法を決めるといったルールを定めておきましょう。あわせて、5年ごとの再確認の時期を台帳などで管理し、確認漏れが起きない仕組みをつくっておくことも欠かせません。
特定性犯罪の前科が判明したらどうする?
確認の結果、特定性犯罪の前科があることが判明した場合、事業者は性暴力のおそれがあるものとして、その人を子どもと接する業務に従事させないための措置をとる必要があります。代表的なのが配置転換などの雇用管理上の措置です。
前科が判明したからといって、ただちに解雇できるわけではない点に注意が必要です。その職員にも尊重されるべき人権があり、就業規則にもとづかない処分は無効とされるおそれがあります。どのような措置をとるのかを、就業規則や対処規程にあらかじめ定めておく必要があります。
また、こども家庭庁は、制度開始後のトラブルを防ぐため、制度開始前から採用選考の際に誓約書等で求職者の性犯罪前科の有無を確認しておくよう呼びかけています。採用時の書類の見直しも、早めに進めておきましょう。
前科がなければ安全といえる?
犯罪事実確認は、子どもを守るための重要な仕組みですが、万能ではありません。確認できるのは一定期間内の特定性犯罪の前科に限られ、初めて加害に及ぶ人を事前に見つけることはできません。
だからこそ、こども性暴力防止法は犯罪事実確認だけでなく、多面的な安全確保措置を求めています。前科の確認と日々の予防策を両輪で進めることが、子どもと職員の双方を守ることにつながります。
ルールづくり服務規律や、不適切な行為の範囲を決める
観察と面談日常の観察、定期的な面談やアンケート
相談窓口子どもや保護者が相談できる窓口を知らせる
研修座学と演習で、全員が対応を学ぶ
よくある質問
特定性犯罪とは何ですか?
こども性暴力防止法第2条第7項で定められた刑法等の罪と、都道府県の条例で定める罪のうち政令で定めるものです。不同意性交等、不同意わいせつ、児童買春、児童ポルノの所持、痴漢、盗撮などが挙げられています。
成人に対する性犯罪も含まれますか?
含まれます。子どもに対する罪だけでなく、成人に対する性犯罪も含まれます。
何年前までの前科が確認の対象ですか?
拘禁刑の実刑は刑の執行を終えた日などから20年、拘禁刑の全部執行猶予は裁判が確定した日から10年、罰金刑は刑の執行を終えた日などから10年です。この期間を過ぎたものは、確認の結果に表れません。
不起訴になった事案も確認されますか?
刑に処せられていない事案は前科ではないため、確認の対象に含まれません。
窃盗など、性犯罪以外の前科も確認されますか?
確認されません。確認の対象は、法律で定められた特定性犯罪の前科に限られます。
犯罪事実確認はいつ行いますか?
子どもと接する業務に就く人について、雇入れや配置転換の際に確認を行い、その後も5年ごとに確認します。
確認できる性犯罪歴と確認できないものを、ケースごとの判定例で整理した記事もあります。日本版DBS:犯罪事実確認で確認できる性犯罪歴とはもあわせてご覧ください。
まとめ
特定性犯罪の範囲や確認の対象期間を正しく理解しておくことは、制度への過度な期待や誤解を防ぎ、職員への説明を適切に行うための前提になります。
日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・行政書士・公認心理師の立場から、犯罪事実確認に対応した就業規則・規程の整備や、採用書類の見直しをサポートしています。
※本記事の内容は、令和8年10月8日時点で公表されている、こども性暴力防止法施行ガイドライン(令和8年9月改訂)およびこども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年9月29日改訂)に基づいています。
日本版DBS 認定準備の流れ(関連記事)
- 認定の対象になるか確かめる(5つの要件と4つの事業タイプ)
- 確認される「特定性犯罪」の範囲と期間を知る(この記事)
- 認定申請に必要な4つの社内規程を整える
- 学習塾が最初に揃える実務リスト
- GビズIDプライムの取得と事業者情報の登録
- 認定申請の具体的な手続き・書類・スケジュール
- 認定後に使える「こまもろうマーク」
- 性暴力の疑いが生じたときの事情確認
- 日本版DBS認定の有無で変わる、性犯罪歴のある求職者への対応
まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。