日本版DBS:犯罪事実確認で確認できる性犯罪歴とは

日本版DBS:犯罪事実確認で確認できる性犯罪歴とは

日本版DBSの「犯罪事実確認」では、スタッフの性犯罪歴がすべて分かるわけではありません。確認できるのは、特定性犯罪にあたる罪で有罪が確定し、しかも決められた期間を過ぎていないものだけです。この記事では、確認できる性犯罪歴と確認できないものを、ケースごとの判定例とあわせて整理します。事業者の担当者が、職員や保護者に説明するときの整理にも使えます。

確認できる性犯罪歴は、3つの条件がそろったもの

犯罪事実確認は、こども家庭庁の「こども性暴力防止法」にもとづく手続きです。確認の結果は、次の3つの条件をすべて満たす人が「特定性犯罪事実該当者」として扱われます。

  1. 特定性犯罪にあたる罪である。
  2. 有罪の判決を受け、刑が確定している。
  3. 刑の種類ごとに決まった期間を過ぎていない。

1つでも欠けると、確認結果は「該当しない」となります。順に見ていきます。

条件1 特定性犯罪にあたる罪

こども家庭庁の施行ガイドラインでは、特定性犯罪として、次のような罪が挙げられています。

  • 刑法の不同意わいせつ罪、不同意性交等罪、16歳未満の者への面会要求等の罪。
  • 児童福祉法の、児童に淫行をさせる行為。
  • 児童買春・児童ポルノ処罰法の、児童買春や児童ポルノの提供・所持などの罪。
  • 性的姿態撮影等処罰法の、性的な姿態の撮影や、その画像の提供などの罪。
  • 都道府県の条例違反のうち、青少年健全育成条例の淫行等や、迷惑防止条例の痴漢・盗撮等。

条例違反は、すべてが対象になるわけではなく、政令で定めるものに限られます。また、被害者が子どもの場合に限らず、成人に対する性犯罪も含まれます。罪名の細かい範囲は、ガイドラインの図表で確認してください。範囲全体の整理は、特定性犯罪とは?日本版DBSで確認される性犯罪の範囲と「何年前まで」の考え方にまとめています。

条件2・3 有罪が確定していて、期間内であること

確認の対象になるのは、裁判で有罪となり、刑が確定した前科です。そのうえで、前科が確認の対象になる期間は、刑の種類によって次のように決まっています。

  • 拘禁刑の実刑:刑の執行を終えた日などから20年を過ぎていないもの。
  • 拘禁刑の執行猶予:裁判が確定した日から10年を過ぎていないもの。
  • 罰金刑:刑の執行を終えた日などから10年を過ぎていないもの。

期間を過ぎた前科は、特定性犯罪であっても確認の対象外で、結果は「該当しない」になります。

確認できないもの

こども家庭庁のQ&Aでは、窃盗罪など特定性犯罪以外の犯罪や、不起訴・示談となった事案は含まれないと説明されています。また、有罪判決を受けていない人も対象外です。まとめると、次のものは犯罪事実確認では確認できません。

  • 不起訴になった事案や、示談で終わった事案。
  • 逮捕されたことや、起訴されて裁判中であること。有罪判決が確定する前は、対象外です。
  • 窃盗や暴行など、特定性犯罪以外の前科。
  • 確認の期間を過ぎた前科。

つまり、犯罪事実確認は、性犯罪に関するすべての情報を調べる制度ではありません。ここを誤解すると、「確認に通ったから安全だ」と考えてしまいます。

ケースで考える:該当するか、しないか

次の例は、上の条件にあてはめた整理です。実際の結果は、犯罪事実確認書で判断されます。

  • 迷惑防止条例違反で罰金刑、刑の執行を終えて8年。特定性犯罪にあたる条例違反で、10年以内のため、該当する可能性があります。
  • 不同意わいせつ罪で拘禁刑の実刑、刑の執行を終えて22年。20年を過ぎているため、該当しません。
  • 児童買春で執行猶予付きの判決、確定して9年。10年以内のため、該当します。
  • 示談が成立し、不起訴になった。有罪が確定していないため、該当しません。
  • 逮捕されて、裁判が続いている。有罪判決の確定前のため、該当しません。
  • 窃盗罪で罰金刑を受けた。特定性犯罪ではないため、該当しません。

確認書には何が書かれ、どのくらいで届くか

犯罪事実確認書は、特定性犯罪事実該当者に該当するかどうかに関する情報を記載した書面です。こども家庭庁のQ&Aでは、交付までの標準的な処理期間は、日本国籍の場合で2週間から1か月、外国籍の場合で1か月から2か月程度とされています。犯罪事実確認は、内定などで子どもと接する業務に就くことが決まった人について行うもので、内定の前には行えません。内定の前は、誓約書などで特定性犯罪の前科の有無を確かめておきます(こども家庭庁Q&A 基礎編6-4・7-4)。

確認の結果、特定性犯罪事実該当者に当たる場合は、事業者に確認書が届く前に、こども家庭庁から本人に内容が通知されます(事前通知)。本人は、内容に誤りがあると考えるときは、通知を受けた日から2週間以内に訂正を求められます。一方、事業者が本人に確認結果を開示することはできません(法第35条第5項・第37条、同Q&A 基礎編6-13・応用編8-13)。確認書の取扱いは、本人にとって非常に機微な情報になります。閲覧できる人や保管のしかたは、社内で先に決めておいてください。

確認の結果、特定性犯罪事実該当者に当たると分かった場合は、その人を子どもと接する業務から外す配置転換など、必要な措置が事業者に求められます。期間雇用の従事者の扱いなど、具体的な実務は配置転換と期間雇用の記事で整理しています。

職員や保護者に説明するときの3つのポイント

犯罪事実確認は、職員にとっても、保護者にとっても、誤解が起きやすい制度です。説明するときは、次の3点を先に伝えておくと、あとの混乱が減ります。

  • 確認の対象は、特定性犯罪のうち、有罪が確定した前科に限られること。
  • 痴漢や盗撮などの条例違反も含まれるが、期間を過ぎた前科は対象外になること。
  • 確認結果は、本人の機微な情報として厳重に扱い、必要な人だけが取り扱うこと。

「全員の過去をすべて調べている」と受け取られると、職員に不信感が生まれます。反対に、「確認しているから絶対に安全です」と保護者に伝えるのも、正確ではありません。確認できる範囲と、確認とは別に行う安全対策の両方を、あわせて伝えることが大切です。

「該当しない」は安全の保証ではない

犯罪事実確認は、子どもを性暴力から守るための仕組みのうち、一つの措置です。確認で「該当しない」となっても、事業者にとっての安全対策が終わるわけではありません。認定を受ける事業者には、研修、早期に気づくための仕組み、子どもが相談しやすい体制づくりなども求められています。確認でできることの限界を理解したうえで、ほかの措置と組み合わせることが大切です。

確認の時期や手続きの流れは、犯罪事実確認とは?手続きの流れと事業者が知るべきポイントで説明しています。

よくある質問

成人に対する性犯罪も確認の対象ですか。対象です。被害者が子どもの場合に限りません。

内定を出す前に確認できますか。できません。犯罪事実確認ができるのは、子どもと接する業務に就くことが決まった人だけです。内定の前は、誓約書などで特定性犯罪の前科の有無を確かめておきます(こども家庭庁Q&A 基礎編6-4・7-4)。

確認を受けた本人は、自分の結果を見られますか。特定性犯罪事実該当者に当たる場合は、事業者に確認書が届く前に本人へ通知され、誤りがあれば2週間以内に訂正を求められます。事業者に確認結果の開示を求めることはできません(こども家庭庁Q&A 基礎編6-13・応用編8-13)。

外国籍の人は、確認に時間がかかりますか。標準的な処理期間は、日本国籍の場合より長く、1か月から2か月程度とされています。採用や配置の予定は、余裕をもって立ててください。

担当者向け:準備の確認リスト

ここまでの内容をふまえて、事業者の担当者が確認しておきたい点を、リストにまとめます。

  • 確認できる範囲と、確認できない範囲を、職員向けに文章で説明できる。
  • 犯罪事実確認書を見られる人と、保管のルールを決めている。
  • 内定前の誓約書による確認と、内定後の犯罪事実確認にかかる期間(外国籍の人は長め)を、採用の日程に織り込んでいる。
  • 確認結果の取扱いを、就業規則や社内規程に書いている。
  • 確認とは別に行う安全対策(研修、相談体制、早期発見の仕組み)を一覧にしている。

5つのうち、いくつ書面で説明できるかが、準備の進み具合の目安になります。

まとめ

確認できる性犯罪歴は、特定性犯罪にあたる罪で有罪が確定し、期間内にあるものに限られます。不起訴・示談・逮捕・裁判中・特定性犯罪以外の前科・期間を過ぎた前科は確認できません。職員や保護者への説明では、この範囲を先に伝えておくと、制度への過度な期待や誤解を防げます。

日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・行政書士・公認心理師の立場から、犯罪事実確認に対応した就業規則・規程の整備や、採用書類の見直しをサポートしています。

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