日本版DBSで性暴力の疑いが生じたら 事情確認と職場のリスク管理

日本版DBSで性暴力の疑いが生じたら 事情確認と職場のリスク管理

こどもへの性暴力の疑いが生じたとき、事業所には、こどもの安全を守りながら、事実を丁寧に確認していく対応が求められます。一方で、対応の仕方を誤ると、職場に誤解や噂が広がり、孤立やハラスメントを生むおそれもあります。この記事では、日本版DBS(こども性暴力防止法)の運用で押さえておきたい、事情確認の進め方と職場への影響への備えを解説します。

影響を受けるのは当事者だけではない

事情確認や、こどもとの接触を避けるための措置を行えば、職場の雰囲気に少なからず影響が出ます。被害を訴えているこどもやその保護者はもちろん、相談に対応したスタッフ、加害が疑われているスタッフ、同僚や上司も、心理的な負担を受けることがあります。事実が確認されていない段階だからこそ、話題として広がりやすい点にも注意が必要です。

事情確認は「責める場」ではない

事情確認は、こどもの安全を守るための措置が必要かどうか、どのような措置が必要かを判断するために行うものです。犯罪の捜査でも、責任を追及する場でもありません。最初にこのことを担当者と責任者が共有し、話を聴く相手にも伝えることが大切です。

また、こどもや保護者が調査を望まないこともあります。報復への不安や、周囲に知られることへの心配など、理由はさまざまです。申し出た人の意向を尊重しつつ、こどもの安全の観点から事業所として事情確認を行うかどうかを判断する必要があるため、その判断の基準や手順を事前に決めておくと慌てずに済みます。

事情確認では何に気をつける?

  • できる限り速やかに行う(証拠の散逸や噂の拡大を防ぐ)
  • 相談者、加害が疑われる人、その他の関係者から、原則として別々に話を聴く
  • 聴き取った内容を、関係者どうしで共有しない
  • 確認できた事実と、推測や評価を分けて記録する
  • 長時間の聴き取りを避け、必要に応じて休憩や日を改める

こどもから話を聴く場面では、誘導するような質問をしないことが特に重要です。何度も同じ話をさせることも、こどもの負担になるだけでなく、記憶の正確さにも影響します。専門家の助言を得ながら進めることも検討しましょう。

記録は、あとから事実関係を説明するための大切な資料です。いつ、誰が、どこで、何を聴いたかを具体的に残し、話した人の言葉はできるだけそのまま書き留めます。記録の保管場所と閲覧できる人も限定しておきましょう。

対応チームの役割はどう分ける?

こども家庭庁のひな型では、責任者を定めたうえで、チーム長、被害児童・保護者担当、加害が疑われる者担当、対外調整担当などからなる「対応チーム」で対応する体制が示されています。被害を受けたこどもへの対応と、加害が疑われる人への対応を同じ人が担うと、こどもが「話したことが相手に伝わるのでは」と不安を感じ、安心して話せなくなるおそれがあります。小規模な事業所で1人が複数の役割を兼ねる場合でも、この2つはできる限り別の人が担当するようにしましょう。代表者や責任者自身に疑いが生じた場合に備えて、代わりの担当者を決めておくことも大切です。

懲戒の手続きとは分けて考える

こどもとの接触を避けるための措置は、こどもの安全を守るための一時的な措置であり、懲戒処分とは目的が異なります。のちに懲戒を検討する場合は、就業規則に基づき、あらためて本人に弁明の機会を与える必要があります。この違いを本人に丁寧に説明しておくと、不要な反発や誤解を防げます。

事実確認後の職場への説明

職場に説明するときは、共有する内容と範囲を必要最小限にとどめ、関係者が特定されないよう配慮します。「事実が確認できなかった」ことは、「被害がなかった」「申告が虚偽だった」ことと同じではありません。申し出たこどもや相談者が非難されることのないよう、説明の言葉選びには細心の注意が必要です。疑いが晴れて現場に戻るスタッフについても、通常の人事異動との違いが周囲に分かるような配慮が求められます。

疑いが晴れたスタッフが現場に戻る際は、復帰前に面談を行い、本人の体調や不安、業務の調整について確認します。周囲に対しても中立的な表現で必要な説明を行い、うわさや偏見が残らないよう、管理職が職場の様子に気を配ることが大切です。

よくある質問

Q. 事情確認は何のために行いますか?

こどもの安全を守るための措置が必要かどうか、どのような措置が必要かを判断するために行います。犯罪の捜査でも、責任を追及する場でもありません。

Q. 関係者からは、どのように話を聴けばよいですか?

できる限り速やかに、相談者、加害が疑われる人、その他の関係者から原則として別々に話を聴きます。聴き取った内容は関係者どうしで共有しません。

Q. こどもから話を聴くときの注意点は何ですか?

誘導するような質問をしないこと、何度も同じ話をさせないことが特に重要です。専門家の助言を得ながら進めることも検討します。

Q. こどもとの接触を避ける措置は、懲戒処分ですか?

懲戒処分とは目的が異なる、こどもの安全を守るための一時的な措置です。のちに懲戒を検討する場合は、就業規則に基づき、あらためて本人に弁明の機会を与える必要があります。

Q. 事実が確認できなかった場合、被害はなかったことになりますか?

「事実が確認できなかった」ことは、「被害がなかった」「申告が虚偽だった」ことと同じではありません。申し出たこどもや相談者が非難されないよう、説明の言葉選びに注意します。

まとめ

こども家庭庁は、性暴力の疑いを把握した場合の対応ルールのひな型を公表しています。こうした資料も参考にしながら、あらかじめ自社の対応手順と担当者を決めておくことで、いざというときにも、こどもとスタッフの双方を守る対応ができます。

日本版DBS 認定準備の流れ(関連記事)

  1. 認定の対象になるか確かめる(5つの要件と4つの事業タイプ)
  2. 確認される「特定性犯罪」の範囲と期間を知る
  3. 認定申請に必要な4つの社内規程を整える
  4. 学習塾が最初に揃える実務リスト
  5. GビズIDプライムの取得と事業者情報の登録
  6. 認定申請の具体的な手続き・書類・スケジュール
  7. 認定後に使える「こまもろうマーク」
  8. 性暴力の疑いが生じたときの事情確認(この記事)

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順番を確認できます。

公式資料

TOP