
令和8年(2026年)12月25日に「こども性暴力防止法」(正式名称:学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)が施行されます。学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者は、国の「認定」を受けることで、スタッフに特定の性犯罪の前科がないかを国に確かめる手続き(犯罪事実確認)を行えるようになります。この記事では、こども家庭庁の施行ガイドライン(令和8年9月改訂)とQ&A(令和8年9月29日改訂)をもとに、認定申請の手続き、必要書類、費用、準備スケジュールを図表つきで整理します。(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法・ガイドライン」)
- 認定申請ができるのは、令和8年(2026年)12月25日からです。施行前に認定を受けることはできません。
- 申請は、こども家庭庁のシステム(こまもろうシステム)からオンラインで行います。GビズIDが必要です。
- 手数料は1事業あたり30,000円です。認定に更新の手続きはありません。
- 審査の目安は1か月から2か月です。書類の不備を直す期間は、この目安に含まれません。
- 2つの規程づくりと、いま働いているスタッフの研修は、申請の前に済ませておきます。
認定制度の趣旨と仕組み
こども性暴力防止法における認定とは、民間教育保育等事業者が、学校や認可保育所などと同等の安全確保の取組を行える体制を整えていることについて、こども家庭庁の認定を受ける制度です(法第19条第1項)。認定を受けるかどうかは事業者が決められます(任意)。
事業者が申請する体制を整えたうえで、こども家庭庁へオンラインで申請します。
こども家庭庁が審査・認定する6つの基準を満たしているかを審査します。目安は1か月から2か月です。
認定事業者になる事業者名が公表され、スタッフの犯罪事実確認を行う義務が生じます。こまもろうマークも使えます。
認定を受けた事業者は「認定事業者等」として、こども家庭庁のウェブサイトで公表されます。対象業務に従事する人の犯罪事実確認を行う義務が生じ、国に対して犯罪事実確認書の交付を申請できるようになります。また、認定事業者マーク(こまもろうマーク)を広告やウェブサイトなどに表示でき、法に基づく取組をしている事業者であることを保護者や求職者に示せます。ただし、マークは将来の安全や無事故を保証するものではありません。認定後も日々の安全対策を続ける必要があります。
認定申請の対象となる事業者
認定申請の対象は、法第2条第5項に定める「民間教育保育等事業者」です。主な事業は次のとおりです。
| 分類 | 認定の対象になる主な事業 |
|---|---|
| 教育 | 学習塾、スポーツクラブ、スイミングスクール、音楽教室、フリースクールなど(「民間教育事業」の5つの要件を満たすもの) 専修学校(一般課程)・各種学校で、子どもを専ら対象とする教育を行う事業 |
| 保育・児童福祉 | 放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)と、これに類する事業(放課後子供教室など) 認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、子育て短期支援事業(※) 児童自立生活援助事業、ファミリーホーム、児童育成支援拠点事業など 指定を受けていない児童発達支援・放課後等デイサービスなど |
| 障害福祉 | 障害のある子どもへの居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所、重度障害者等包括支援(指定障害福祉サービス) |
※子育て短期支援事業は市町村が実施主体のため、委託を受けた事業者が単独で認定を受けることはできず、市町村との共同認定になります。
学習塾やスポーツクラブなどの「民間教育事業」は、次の5つの要件をすべて満たす場合に対象になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 子どもに教える事業 | 子どもに技芸や知識を教えることを目的にしている(大人と子どもの両方が対象でもよい) |
| 2. 6か月以上 | 6か月以上の期間にわたって行い、同じ子どもが複数回参加できる |
| 3. 対面の指導がある | オンラインだけの事業は対象外 |
| 4. 事業者が用意する場所 | 教室や公民館など、事業者が決めた場所で教える(子どもの自宅は除く) |
| 5. 教える人が3人以上 | 派遣やボランティアも含めて数える |
なお、指定を受けた児童発達支援や放課後等デイサービスなどの指定障害児通所支援事業は、法律上の義務対象(学校設置者等)となるため、認定申請の対象ではありません。
1つの事業者が種類の違う事業(例:放課後児童クラブとスポーツクラブ)を行っている場合は、事業ごとに申請します。同じ事業を複数の事業所で行っている場合(例:○○塾の新宿校と渋谷校)は、1つの事業としてまとめて申請します。
| 申請の種類 | どんな場合か |
|---|---|
| 認定 | 事業者が自分で事業を運営している場合。単独で申請します。 |
| 共同認定 | 運営の全体を委託・指定管理している場合。委託元と委託先が共同で申請します(例:市町村が放課後児童クラブの運営全体を民間事業者に委託している)。 |
認定を受けるための6つの基準
こども家庭庁は、申請内容が次の6つの基準すべてに適合していると認めた場合に認定を行います(法第20条第1項)。
犯罪事実確認の体制確認を進める責任者を決める
早期把握日常の観察、面談・アンケート、報告のルール
相談体制相談員や相談窓口を決めて知らせる
対処規程疑いが生じたときの対応を定めた規程
研修座学と演習を組み合わせた研修
情報管理確認結果を漏らさないための管理
1. 犯罪事実確認を適切に実施する体制の整備
犯罪事実確認を計画的かつ適切に進めるための責任者を選任します(規則第19条第1項)。責任者は、確認の進行管理、対象となるスタッフへの事前の通知、交付された犯罪事実確認書の確認、確認が間に合わない場合の特例(いとま特例)を使うときの説明と記録の保存を担います。
2. 早期把握措置の実施
不適切な行為や兆候を早期に把握するため、以下の措置を実施していることが求められます(規則第8条)。
- 子どもに対する日常的な観察
- 子どもの発達段階や特性に応じた定期的な面談やアンケートの実施
- 適切な報告ルールおよび対応ルールの策定と周知
3. 相談体制の整備
子どもや保護者が安心して相談できるよう、事業者内における相談員の選任または相談窓口の設置・周知と、外部の相談窓口の周知が必要です(規則第9条)。
4. 児童対象性暴力等対処規程の作成
防止措置、事実確認のための調査、被害を受けた子どもの保護と支援などを定めた「児童対象性暴力等対処規程」を作成し、申請時に提出する必要があります(法第20条第1項第4号)。
5. 従事者研修の実施
対象業務に従事するスタッフに、座学と演習を組み合わせた研修を受講させる必要があります(規則第19条第3項)。基礎知識、不適切な行為の範囲、相談対応、情報管理など、決められた8つの項目を扱います。
受講の時期にも決まりがあります。認定申請のときに、すでに子どもに接する業務に就いているスタッフは、申請の前に受講を済ませます。これから業務に就く人(内定者など)は、業務を始める前までに受講すれば足ります。研修の内容と進め方は「従業員向け社内研修」で説明しています。
6. 情報管理措置の実施
犯罪事実確認記録等の漏えいを防止するため、管理責任者の設置、情報管理規程の策定・遵守が求められます。また、情報管理の責任者を含めて、認定を受ける事業に従事する教育保育等従事者が2人以上いることも要件です(規則第12条第1項)。
認定申請の手続きフロー
認定申請は、法律の施行日である令和8年(2026年)12月25日から行えるようになります。施行前に認定そのものを取得することはできません。申請は原則として「こども性暴力防止法関連システム(こまもろうシステム)」からオンラインで行います(規則第18条第1項)。審査には1か月から2か月程度かかります。この期間には、書類の不備を直すまでの期間は含まれません。
準備規程づくり、研修、相談窓口の整備、GビズIDの取得
申請システムに入力し、書類を添付して手数料を納付
審査確認や訂正の依頼があれば、早めに対応
認定・公表マークのダウンロード、犯罪事実確認の開始
現職者の確認認定時に働いているスタッフの確認を終えて届け出る
- GビズID(プライム)の取得:法人代表者または個人事業主のアカウントとしてGビズID(プライム)を取得します。申請方法にはオンライン方式と書面郵送方式があり、選ぶ方法や審査の状況によって必要な日数や本人確認書類が異なります(書面方式等の場合は印鑑証明書が必要となります)。
- システムのアカウント設定:取得したGビズIDでこまもろうシステムにログインし、事業者情報を登録します。
- 申請情報の入力と添付書類の提出:事業の概要、事業所の情報、対象業務の内容などを入力し、必要書類をアップロードします。
- 手数料の納付:システム上で申請手数料を納付します。
- 補正への対応:こども家庭庁から確認や訂正の依頼があった場合は、案内に従って修正や追加資料の提出を行います。
- 認定および公表:審査を経て認定されると、こども家庭庁のウェブサイトで公表されます。認定事業者マーク(こまもろうマーク)をダウンロードでき、犯罪事実確認の手続きに進めます。
- 認定時に働いているスタッフの確認:認定の時点で対象業務に就いているスタッフ(認定時現職者)の犯罪事実確認を、認定から1年以内に行います。全員分が終わったら、システムを通じてこども家庭庁に届け出ます。
詳しい操作の手順は、こども家庭庁が認定対象事業者向けのマニュアルで示す予定としています。
主な添付書類
認定申請時には、主に以下の書類の添付が求められます(法第19条第4項、規則第18条第3項・第4項)。
| 書類 | ポイント |
|---|---|
| 定款・登記事項証明書 | 法人の場合。個人は住民票の写し、法人でない団体は会則・規約など |
| 事業を行っていることが分かる資料 | 児童福祉法上の届出事業は事業開始届出書の写しなど。民間教育事業はウェブサイトやパンフレット、教える人3人分の情報など |
| 事業と業務の内容を説明する資料 | 事業の概要と、対象となるスタッフの具体的な業務内容。既存のパンフレットや募集要項を使えます |
| 児童対象性暴力等対処規程 | 基準4で作成した規程 |
| 情報管理規程 | 基準6で作成した規程 |
| 認定基準に適合していることが分かる資料 | 責任者の部署名・役職・氏名、研修を受講したことが分かる書類など |
| 誓約書(2種類) | 犯罪事実確認を適切に実施する旨の誓約書、欠格事由に該当しない旨の誓約書 |
| 役員の氏名・略歴等を示す書類 | 法人の場合 |
役員について出す書類と、認定を受けられない場合の考え方は「役員に不適切な行為や犯罪事実があった場合」で説明しています。
申請手数料
認定申請の手数料は、オンライン申請の場合は1事業あたり30,000円です(法第40条、令第7条)。この手数料は事業者単位や事業所単位ではなく、事業ごとに納付します。
| 費用の項目 | 金額 |
|---|---|
| 認定申請(オンライン) | 1事業あたり30,000円 |
| 認定申請(例外的に書面で行う場合) | 1事業あたり31,500円 |
| 犯罪事実確認 | 手数料はかかりません |
| 認定の更新 | 更新の手続きはありません |
| 国・地方公共団体の申請 | 単独で申請する場合や、国・地方公共団体が委託元となる共同認定の場合は不要 |
認定の欠格事由
以下のいずれかに該当する事業者は、認定を受けることができません(法第20条第2項)。
- 過去に認定を取り消された日から2年を経過していない者
- こども性暴力防止法の規定により刑に処せられ、刑の執行終了等から5年を経過していない者
- 法人であって、その役員の中に上記の事由に該当する者がいる場合
認定を受けた後に行うこと
認定はゴールではなく、取組の始まりです。認定後は次の手続きが続きます。
- 認定時に働いているスタッフの犯罪事実確認を、認定から1年以内に終えて届け出る
- 新しく対象業務に就く人は、原則として業務を始める前に犯罪事実確認を行う
- こども家庭庁が公表している事業概要等(名称・所在地・代表者の氏名など)を変えるときは、変更する日の2週間前までに変更届を出す
- 児童対象性暴力等対処規程・情報管理規程を変えるときは、変更する前に変更届を出す(部署名・役職名の形式的な変更など、規程の軽微な変更は不要)
施行に向けた事前の準備
認定申請ができるのは令和8年12月25日の施行日以降ですが、申請時に必要な「児童対象性暴力等対処規程」や「情報管理規程」の作成、研修の実施、相談体制の整備には一定の準備期間が必要です。GビズID(プライム)を取得済みかどうかの点検も、早めに進めておきましょう。
- 自分の事業が認定の対象になるかを確かめた
- GビズID(プライム)を取得した
- 児童対象性暴力等対処規程と情報管理規程を作成した
- 相談員または相談窓口を決め、報告と対応のルールを決めた
- いま対象業務に就いているスタッフ全員が研修を受講した
- 定款や登記事項証明書など、添付する書類をそろえた
施行直後に円滑な申請を行えるよう、あらかじめ社内体制と提出書類を整えておくことをおすすめします。手続きの細部やシステムの操作方法に関する最新情報は、こども家庭庁の公式公表資料を随時ご確認ください。
よくある質問
認定申請はいつからできますか。
令和8年(2026年)12月25日から申請できます。認定までには、審査などで1か月から2か月程度かかります。
認定は必ず受けなければなりませんか。
認定申請は任意です。こども家庭庁は、子どもの安全を守るため、できるだけ多くの対象事業者に認定を取得してほしいとしています。
複数の事業を行っている場合、事業ごとに認定が必要ですか。
事業ごとに申請が必要で、手数料も事業ごとにかかります。同じ事業を複数の事業所で行っている場合は、1つの事業として申請します。
認定申請の手数料のほかに費用はかかりますか。
犯罪事実確認など、認定申請以外の手続きに手数料はかかりません。認定の更新もありません。
法人ではない団体でも申請できますか。
申請できます。ただし、代表者または管理人の定めがあり、団体としての組織を持ち、統一された意思のもとに活動している場合に限られます。
※本記事の内容は、令和8年10月8日時点で公表されている、こども性暴力防止法施行ガイドライン(令和8年9月改訂)およびこども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年9月29日改訂)に基づいています。
日本版DBS 認定準備の流れ(関連記事)
- 認定の対象になるか確かめる(5つの要件と4つの事業タイプ)
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- 認定申請に必要な4つの社内規程を整える
- 学習塾が最初に揃える実務リスト
- GビズIDプライムの取得と事業者情報の登録
- 認定申請の具体的な手続き・書類・スケジュール(この記事)
- 認定後に使える「こまもろうマーク」
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こども性暴力防止法の目的・対象事業者・施行日・罰則は、「日本版DBS(こども性暴力防止法)とは」にまとめています。
手続きを専門家に任せる場合の進め方は、認定申請を行政書士に頼む流れで5段階に分けて説明しています。
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