
令和8年(2026年)12月25日に施行される「こども性暴力防止法」(正式名称:学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)では、学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者が「認定」を受けることで、従事者の犯罪事実確認を行えるようになります。
本記事では、こども家庭庁が公表した施行ガイドラインに基づき、民間教育保育等事業者が認定申請を行うための具体的な手続き・必要書類・費用・スケジュールを解説します。
認定制度の趣旨と仕組み
こども性暴力防止法における「認定」とは、民間教育保育等事業者が学校設置者等と同等の安全確保措置を実施する体制が整っていることについて、こども家庭庁の認定を受ける制度です(法第19条第1項)。
認定を受けた事業者は「認定事業者等」として公表され、対象業務に従事する者の犯罪事実確認が義務となり、犯罪事実確認書の交付を申請できるようになります。また、こども家庭庁が定める認定マークを使用でき、保護者が安心して子どもを預けられる事業者であることを示すことができます。
認定申請の対象となる事業者
認定申請の対象は、法第2条第5項に定める「民間教育保育等事業者」です。具体的には以下のような事業者が含まれます。
- 学習塾・予備校(民間教育事業)
- スポーツクラブ・スイミングスクール(民間教育事業)
- 放課後児童健全育成事業(学童保育)
- 認可外保育施設
- 放課後等デイサービス(指定障害児通所支援事業以外)
- 病児保育事業
- 一時預かり事業
- 子育て短期支援事業
なお、1つの事業者が複数の民間教育保育等事業を行っている場合は、事業ごとに認定申請が必要です。一方、同一事業が複数の事業所で実施されている場合は、1つの事業として申請します(法第19条第1項)。
認定を受けるための6つの基準
こども家庭庁は、申請内容が以下の6つの基準すべてに適合すると認めたときに認定を行います(法第20条第1項)。
1. 犯罪事実確認を適切に実施する体制の整備
犯罪事実確認を計画的かつ適切に実施するための責任者を選任する必要があります(規則第19条第1項)。責任者には、確認業務の管理、従事者への事前通知、交付された犯罪事実確認書の確認などの役割が求められます。
2. 早期把握措置の実施
児童対象性暴力等が行われるおそれがないかを早期に把握するため、次の措置を実施していることが必要です(規則第8条)。
- 児童等に対する日常観察
- 発達段階や特性に応じた児童等への定期的な面談・アンケート
- 適切な報告・対応ルールの策定・周知
3. 相談体制の整備
児童等が容易に相談できる体制として、事業者内における相談員の選任または相談窓口の設置・周知、および外部相談窓口の周知が必要です(規則第9条)。
4. 児童対象性暴力等対処規程の作成
防止措置、事実確認のための調査、被害児童等の保護・支援について定めた規程を作成する必要があります(法第20条第1項第4号)。規程には、防止措置の具体的内容(特定性犯罪事実該当者を対象業務に従事させないこと等)や、調査の実施方法、被害児童の保護手順を盛り込みます。
5. 研修の実施
対象業務従事者に対して、座学と演習を組み合わせた研修を受講させることが必要です(規則第19条第3項)。研修には、性暴力防止の基礎知識、不適切な行為の範囲、相談対応、犯罪事実確認の手続き、情報管理の必要性など8項目が含まれます。
6. 情報管理措置の実施
犯罪事実確認記録等を適正に管理するため、管理責任者の設置、情報管理規程の策定・遵守、認定等事業に従事する教育保育等従事者が2人以上であることが求められます(規則第12条第1項)。
認定申請の手続きフロー
認定申請は原則としてこども性暴力防止法関連システムを介したオンライン手続きで行います(規則第18条第1項)。標準処理期間は1か月から2か月程度です。手続きの流れは以下のとおりです。
- GビズIDの取得:デジタル庁にGビズID(プライム)を申請し、取得します(印鑑証明書が必要で、取得まで2〜3週間程度かかります)
- こども性暴力防止法関連システムへのアカウント登録:GビズIDを用いてシステムにアクセスし、事業者情報を入力してアカウントを登録します
- 申請書の入力・添付書類の提出:事業者情報、事業概要、従事者の業務概要等を入力し、必要書類を提出します
- 手数料の支払い:システム上で所定の手数料を納付します
- 補正指示への対応:不備があった場合は、こども家庭庁の指示に従い修正対応を行います
- 認定結果の受領:認定されるとこども家庭庁のウェブサイトに公表され、認定マークが使用可能になります
必要な添付書類
認定申請時に提出が必要な主な添付書類は以下のとおりです(法第19条第4項、規則第18条第3項・第4項)。
- 定款および登記事項証明書(法人の場合)
- 民間教育保育等事業を行っていることを証する資料(事業開始届出書の写し等)
- 民間教育保育等事業および対象業務従事者の業務の詳細を説明する資料
- 児童対象性暴力等対処規程
- 情報管理規程
- 認定基準に適合していることを証する資料(責任者の部署名・役職・氏名等)
- 犯罪事実確認を適切に実施する旨の誓約書
- 欠格事由に該当しないことの誓約書
- 役員の氏名・略歴等を示す書類(法人の場合)
申請手数料
認定申請の手数料は、オンライン申請で1事業あたり3万円です(法第40条、令第7条)。書面申請の場合は3万1,500円となります。
なお、この手数料は事業者単位・事業所単位ではなく、1事業あたりの金額です。犯罪事実確認の手続き自体には手数料はかかりません。また、国・地方公共団体が単独で認定申請する場合、または国・地方公共団体を民間教育保育等事業者とする共同認定の場合は、手数料が免除されます。
認定を受けられない場合(欠格事由)
以下に該当する事業者は認定を受けることができません(法第20条第2項)。
- 認定等を取り消された日から2年を経過しない者
- こども性暴力防止法の規定により刑に処せられ、その執行終了等から5年を経過しない者
- 法人で、役員のうちに上記に該当する者がいるもの
まとめ:早めの準備が重要
認定申請は、GビズIDの取得から認定取得まで数か月を要します。施行日(令和8年12月25日)に間に合わせるためには、事前の体制整備と書類準備を計画的に進めることが不可欠です。
特に、児童対象性暴力等対処規程と情報管理規程の2つの規程は認定申請の必須添付書類であり、十分な検討と整備が必要です。また、犯罪事実確認の責任者の選任、研修の実施、相談窓口の設置など、認定基準への適合準備も並行して進めましょう。
最新の情報や具体的なシステム操作マニュアルについては、こども家庭庁の公式ウェブサイトを定期的に確認することをおすすめします。
※本記事の内容は、令和8年3月28日現在における下記の資料に基づいたものです。
・こども性暴力防止法施行ガイドライン
・横断指針