
こども性暴力防止法が制定された背景
教育・保育等の現場において、こどもへの性暴力の事案が後を絶たない状況が続いています。こどもへの性暴力等は、こどもの権利を著しく侵害し、生涯にわたり心身の発達に深刻な影響を与え得るものです。
こどもに対して教育・保育等を行う事業は、こどもの心身の健やかな育成に資することを目的としています。こうした場において性暴力等の被害を生じさせることは、その目的に根本から反するものです。
さらに、教育・保育等の事業では、従事者がこどもへの指導などを通じて支配的・優越的立場に立ち、継続的に密接な人間関係を持つという特別な社会的関係があります。親などの監視がない状況下でこどもを預かるため、性暴力等の発生に特別の注意を払うことが求められます。
法律の正式名称と成立経緯
こうした背景を受け、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)が、令和6年6月に成立しました。一般に「こども性暴力防止法」や「日本版DBS法」と呼ばれています。
施行日は令和8年(2026年)12月25日とされており、現在は施行準備が進められている段階です。令和7年4月にこども家庭庁に設置された「こども性暴力防止法施行準備検討会」において、学識経験者、地方公共団体、教育・保育等事業者、保護者や若者の代表による検討が行われています。
法律の目的
本法は、児童等の心身の健全な発達に寄与することを目的として、主に以下の3つの事項を定めています。
1. 事業者の責務の明確化
学校設置者等および民間教育保育等事業者が、教員等および教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止等をする責務を有することを明らかにしています。
2. 認定制度の創設
学校設置者等が講ずべき措置と同等の措置を実施する体制が確保されている民間教育保育等事業者を認定する仕組みを設け、認定を受けた事業者が講ずべき措置を定めています。
3. 犯罪事実確認の仕組み
教員等および教育保育等従事者が特定性犯罪事実該当者に該当するか否かに関する情報を、国が事業者に対して提供する仕組み(いわゆる「日本版DBS」)を設けています。
対象となる事業者と従事者
本法では、対象事業者を大きく2つに分類しています。
学校設置者等(義務対象)
学校、児童福祉施設等が該当し、法に基づく措置を講じる義務を負います。これらの事業者における犯罪事実確認の対象となる従事者を「教員等」と呼びます。
民間教育保育等事業者(認定対象)
学習塾、放課後児童健全育成事業、認可外保育事業等が該当します。こども家庭庁の認定を受けることで、犯罪事実確認の仕組みを利用できるようになります。これらの事業者における対象従事者を「教育保育等従事者」と呼びます。
特定性犯罪と確認期間
犯罪事実確認の対象となる「特定性犯罪」について、以下の期間にわたって該当者であるかどうかが確認されます。
- 拘禁刑の執行終了等から20年を経過しない者
- 拘禁刑の執行猶予者で裁判確定日から10年を経過しない者
- 罰金刑の執行終了等から10年を経過しない者
こうした仕組みにより、性犯罪歴のある者がこどもに接する業務に就くことを防止し、こどもの安全を確保することが目指されています。
事業者の責務
法第3条では、学校設置者等および民間教育保育等事業者の責務として、以下の2点が定められています。
第一に、教員等および教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止に努めること。第二に、万が一性暴力等が行われた場合には、児童等を適切に保護する責務を有することです。
また、国は事業者がこの責務を確実に果たせるよう、必要な情報の提供や制度の整備その他の施策を実施しなければならないとされています。
まとめ
こども性暴力防止法は、こどもに対する性暴力を社会全体の責任として防止するための法的枠組みです。2026年12月の施行に向けて、対象となる事業者は制度の内容を正しく理解し、準備を進めることが求められます。
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※本記事の内容は、令和8年3月30日現在における下記の資料に基づいたものです。
・こども性暴力防止法施行ガイドライン
・横断指針