「犯歴確認」だけじゃない!4つの「安全確保措置」

「犯歴確認」だけじゃない!4つの「安全確保措置」

今回は、認定審査において書類(規程)と同じくらい重要視されることが想定される、「安全確保措置(研修・面談・相談体制)」にテーマとしています。
特に「研修」や「相談窓口」は、形だけの導入になりがちですが、認定基準では「実効性」が重要視されることに注意が必要です。


日本版DBS認定審査で問われる「4つの安全確保措置」の実務対応ガイド

2026年12月の日本版DBS(こども性暴力防止法)施行に向け、認定取得を目指す民間事業者様(学習塾、スポーツクラブ等)から、多くのご相談をいただいています。

その中で最も多い誤解が、「日本版DBS=性犯罪歴をチェックするだけの制度」というものです。
実は、国の認定を受けるためには、犯歴確認を行う前提として、「安全確保措置」と呼ばれる4つの体制を整備することが法律で義務付けられています。

これらが整備されていない場合、急いで申請書を出しても要件不備となり、認定取得には至りません
本記事では、認定の必須条件である「研修」「面談」「相談体制」等の実務ポイントを解説します。

1. 認定の必須条件「安全確保措置」とは?

こども性暴力防止法では、性犯罪歴の確認(DBSチェック)は「最後の砦」と位置づけられています。それ以前に、日常の業務の中で性暴力を未然に防ぎ、万が一の予兆を早期に発見するための仕組み作りが求められます。これを「安全確保措置」と呼びます。

具体的には、以下の4つの柱を整備する必要があります。

  1. 早期把握措置:
    面談やアンケートで異変にいち早く気づく仕組み。
  2. 相談体制の整備:
    こどもや保護者がSOSを出せる窓口の設置。
  3. 研修の実施:
    従事者に対する定期的な教育。
  4. 対処規程の策定:
    発生時の調査・保護・支援の手順化。

これらは「やればいい」というものではなく、「内閣府令で定める基準」に適合していることが審査されます。

2. 【早期把握】「形だけのアンケート」では不十分

事業者は、こどもに対する性暴力等の兆候を早期に把握するため、日常的な観察に加え、定期的な面談やアンケートを実施しなければなりません。

どのような頻度・内容が必要か?

ガイドライン等では、少なくとも「年に1回以上」の実施が求められています。
また、対象となるこどもの発達段階(年齢)や特性に応じた工夫が必要です。

  • 未就学児の場合:
    こども自身へのアンケートは難しいため、保護者への面談や、保育士による丁寧な日常観察記録で代替します。
  • 小学生以上の場合:
    こども本人が回答できるアンケートを実施します。ただし、「周りの友達に見られない工夫(Web回答や持ち帰り)」や、「被害を書き込みやすくする工夫(チェック形式など)」が求められます。

審査のポイント

認定申請時には、「どのような様式のアンケートを使うか」「いつ実施するか」を示す資料や計画の提出が求められます。「何かあったら聞く」という受動的な姿勢ではなく、事業者が能動的にリスクを探しに行く体制があるかどうかがカギとなります。

3. 【相談体制】「目安箱」だけでは認定されない理由

こどもや保護者が、性被害について容易に相談できる体制を作ることが義務付けられています。
ここで重要なのは、「事業者内部」だけでなく「外部」の窓口も周知する必要があるという点です。

2つの窓口を設置・周知する

  1. 事業者内部の窓口:
    • 教室長やエリアマネージャーなど、特定の担当者を決めて周知します。
    • ただし、加害者がその担当者である可能性も考慮し、複数のルート(本部のコンプライアンス担当など)を用意することが推奨されます。
  2. 外部の相談窓口:
    • 行政(児童相談所、警察、性暴力被害者支援センターなど)の相談窓口一覧を作成し、掲示や配布を行う必要があります。

心理的なハードルを下げる工夫

「相談してね」とポスターを貼るだけでは不十分です。
「匿名で相談できること」「秘密は守られること」「相談しても不利益な扱い(退塾させられる等)を受けないこと」を明示し、心理的安全性を担保することが認定の要件となります。

4. 【研修】座学だけではNG?「演習」が必須に

日本版DBSにおける「研修」は、従来のコンプライアンス研修とは一線を画します。
法令では、単に知識を教えるだけでなく、「座学」と「演習(ロールプレイング等)」を組み合わせることが求められています。

必須となる研修カリキュラム

認定事業者は、以下の項目を含む研修を全従事者(アルバイト含む)に受講させなければなりません。

  1. 性暴力が生じる要因:
    加害者が持ちやすい「認知の歪み(自分勝手な思い込み)」の理解。
  2. 具体的な境界線:
    何が「性暴力」で、何が「不適切な行為(SNSの私的交換、密室での1対1など)」にあたるかの定義。
  3. 早期発見と対処:
    予兆に気づいた時の報告ルート。
  4. 情報管理の重要性:
    犯歴情報の取り扱いについて。

「公認心理師」の視点から見る研修の重要性

特に重要なのが「認知の歪み」への理解です。性加害者は「こどもも同意していた」「指導の一環だった」と自らの行為を正当化する傾向があります。
研修を通じて、スタッフ全員が「ここからはアウト」という境界線を共通認識として持つことが、組織防衛の第一歩となります。

また、eラーニングなどで済ませる場合でも、理解度テストを実施し、受講記録(誰がいつ受けたか)を残すことが認定維持には不可欠です。

5. 認定取得・運用における専門家の役割

ここまでお読みいただき、「アンケートの作成や研修の実施まで自社でやるのは負担が大きい」と感じられた経営者様も多いのではないでしょうか。

日本版DBSの対応は、書類作成だけでなく、「人の心」と「組織の仕組み」に関わるデリケートな問題です。

トリプルライセンスによるワンストップ・サポート

当事務所では、社会保険労務士、公認心理師、行政書士の3つの国家資格を活かし、安全確保措置の構築から運用までをトータルで支援します。

    まとめ:安全への投資が「選ばれる理由」になる

    「安全確保措置」は、手間のかかる義務に見えるかもしれません。
    しかし、これらを着実に実施し、「認定マーク(こまもろう)」を掲げることにより、保護者に対して「当スクールは、お子様の安全を国が認めるレベルで守っています」という非常に心強いメッセージになります。

    ※本記事の内容は、令和8年1月27日現在における下記の資料に基づいたものです。

    ・こども性暴力防止法施行ガイドライン
    ・横断指針

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