
未然防止の基本的な考え方
教育・保育等の場において、従事者によるこどもへの性暴力を未然に防止するためには、事業者として性暴力を決して許さないという姿勢を内外に明確に示すことが有効です。
具体的には、パートタイムやアルバイト、ボランティアを含む全ての従事者に対し、性暴力につながり得る不適切な行為をさせないこと、そしてそのような行為が起きやすい環境や組織体制に潜むリスクを取り除くことが重要とされています。
こども性暴力防止法に基づく横断的指針では、未然防止のための取組として大きく4つの柱が示されています。
1. 服務規律等の整備と周知
就業規則や服務規程、業務マニュアルなどにおいて、性暴力防止のためのルールを明記し、全従事者に周知することが求められます。児童や保護者にもこれらのルールを伝え、共通認識とすることが有効です。
具体的なルールの例
横断的指針では、以下のような分類ごとに具体的な行動規範が示されています。
スマートフォン・SNSの使用について:児童がいる場所での私用端末の使用禁止、児童との私的な連絡先交換の禁止、業務上必要な場合も1対1ではなく複数人で把握できる状態とする、などが挙げられます。
児童とのコミュニケーションについて:職場外で私的に児童と会う約束をしない、原則として密室内で児童と1対1の状態にならないことが定められています。やむを得ず1対1になる場合は、事前に上司と共有する、窓のある部屋で行うなどの対策が求められます。
身体接触について:業務上不必要な接触を行わないことが原則です。ただし、保育園等における愛着形成に必要な接触や、スポーツ指導における補助など、業種に応じた適切な身体接触の基準を共通認識として形成することが重要です。
これらのルールは従事者を不当な批判や疑いから守ることにもつながります。また、採用時にルールを書面で交付し、誓約書を提出してもらうことも有効とされています。
2. 施設・事業所の環境整備
性暴力は、他者の目が行き届きにくい場所や時間帯に発生しやすいことが知られています。横断的指針では、過去に被害が発生した場所の例として、放課後の教室、空き教室、更衣室、トイレ、送迎車などが挙げられています。
ハード面の対策
死角となる場所を把握し、可能な限りなくすことが重要です。全ての部屋を内側から施錠できないようにする、普段使われない部屋は施錠して鍵を一元管理する、レイアウトの変更やミラーの設置で見通しを確保するなどの対策があります。
防犯カメラや人感センサーの設置も、性暴力発生の抑止力として期待されます。プライバシー保護の観点から撮影が難しい場所には、入口にカメラを設置して入退室を記録する方法もあります。
ソフト面の対策
安全責任者による毎日の巡回を実施し、死角となる場所を必ず確認します。巡回は不定期に行い、予測されないようにすることがポイントです。施設内に性暴力防止のメッセージを掲示するなどの意識啓発も有効です。
3. 児童・保護者への教育と啓発
多くの児童は、性暴力の被害を受けたと認識することが難しく、それが加害の継続や発見の遅れにつながっています。児童の発達段階に応じた教育・啓発が不可欠です。
児童に伝えるべきこと
自分自身が大切な存在であること、身体や性の決定権は自分にあること、性暴力とはどのようなものか、そして被害を大人に伝えても怒られないことを知ってもらうことが重要です。
性暴力を受けたり見かけたりした場合には、「NO」(イヤと言う)、「GO」(その場から離れる)、「TELL」(誰かに話す)という3つの行動を選べることを教えることが有効です。
保護者への情報提供
保護者は、児童から被害の開示を受ける最も身近な存在です。しかし、精神的ダメージから対応が混乱することもあるため、性暴力に関する正しい知識や被害発生時の適切な対応について、事前に情報を提供しておくことが大切です。
4. 従事者への研修
全ての従事者がこどもの権利を理解し、性暴力の抑止や疑い発生時の対応について理解を深めることが重要です。事業の経営者自らが率先して研修を受講し、従事者への研修機会を確保することが求められます。
研修を実効的にするためには、実際の現場で起こり得る事例をもとにしたケーススタディやロールプレイングが有効です。1回限りではなく繰り返し行うことで意識の定着を図ることが重要とされています。
研修は業務として必須受講とし、講義形式だけでなく、eラーニングやワークショップなど多様な方法を組み合わせることが効果的です。
まとめ
こどもへの性暴力の未然防止は、服務規律の整備、環境面の対策、児童・保護者への教育、そして従事者研修の4つの柱を組み合わせて取り組むことが重要です。こども性暴力防止法の施行に向けて、各事業者はこれらの取組を計画的に進めていくことが求められます。
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※本記事の内容は、令和8年3月30日現在における下記の資料に基づいたものです。
・こども性暴力防止法施行ガイドライン
・横断指針