
今回は、日本版DBS制度対応の複雑さを踏まえ、「なぜ専門家(行政書士・社労士・公認心理師)のサポートが必要なのか」というテーマです。
日本版DBS認定をスムーズに取得!専門家の活用戦略
2026年12月の日本版DBS(こども性暴力防止法)施行に向け、多くの事業者が準備を急いでいます。しかし、ガイドラインや手引きを読み込むにつれ、「これは自社だけで対応できるのか?」と不安を感じる経営者様が少なくありません。
日本版DBSの認定取得と運用は、「行政手続き」「労務管理」「心理的ケア」という異なる3つの専門知識が求められる、複合的なプロジェクトです。
本記事では、スムーズな認定取得のために、行政書士・社会保険労務士・公認心理師がそれぞれどのような役割を果たすのか、そして「専門家を活用して効率的に認定を取る戦略」について解説します。
1. 制度対応に必要な3つの専門知識と役割
日本版DBSは、単に「役所に書類を出す」だけの制度ではありません。組織の中に「こどもの安全を守る文化」と「従業員の権利を守る仕組み」を両立させる必要があります。そのためには、以下の3つの専門家の視点が重要となります。
①行政書士:行政機関への申請書類作成の専門家
民間事業者が制度を利用するための入り口となるのが「認定申請」です。
行政書士は、こども家庭庁への申請代理を行う国家資格者として、主に以下の業務を担います。
- 認定申請書の作成・代理提出:
多岐にわたる添付書類の収集と整合性チェック。 - 「情報管理規程」の策定:
犯歴情報という機微な個人情報を守るための、物理的・技術的な管理ルールの構築。 - 「児童対象性暴力等対処規程」の策定:
被害発生時の調査や報告ルートの設計。
②社会保険労務士:会社と従業員の良い関係をサポートする専門家
もし犯歴のある従業員が見つかった場合、どう対応すべきでしょうか。日本の労働法制において、解雇は慎重な判断が求められます。
社労士は、労務リスクを回避するために以下の対策を講じます。
- 就業規則の改定:
「犯歴確認への協力義務」や「配置転換の根拠」の明文化。 - 採用プロセスの見直し:
募集要項への条件明記や、入社時の誓約書(自己申告書)の整備。 - 配置転換・懲戒の判断:
万が一の際、不当解雇等の紛争リスクを低減するための法的なロジック構築。
③公認心理師:心理に関する唯一の国家資格者
制度の目的は「こどもを守ること」です。形式的なルール作りだけでなく、実効性のある安全確保措置が求められます。
公認心理師等の心理職は、以下の領域で専門性を発揮します。
- 効果的な研修の実施:
法律で義務付けられた「性暴力の要因(認知の歪み)」や「グルーミング(手なずけ)」に関する研修の提供。 - 被害対応の支援:
万が一の事案発生時、こどもや保護者の不安に寄り添い、今後の希望を傾聴。 - 「おそれ」の判断:
従業員の言動が性暴力につながる「おそれ」があるかどうかのリスク評価。
2. 専門家に依頼すべき「3つの実務的課題」
自社で対応しようとした場合、一例として以下の課題が生じることがあります。このような課題を専門家に任せることで、時間とリスクを大幅に圧縮できます。
課題1:複雑な「情報管理体制」の構築
日本版DBSで扱う「犯罪事実確認書」は、漏洩すれば「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という罰則の対象となる重要な情報です。
「鍵のかかるキャビネットに入れる」だけでは不十分な場合があります。
「誰がアクセスできるか」「電子データはどう暗号化するか」「いつ廃棄するか」といった詳細なルールを定めた『情報管理規程』を作成し、こども家庭庁への認定申請をスムーズに進めるなどお役に立ちます。
課題2:オンライン申請の「GビズID」
認定申請は原則としてオンラインで行われますが、そのために必須となる「GビズIDプライム」の取得が最初のステップです。
印鑑証明書の取得や書類郵送が必要で、発行までに一定の期間が必要となるものですが、このIDがないと、システムへのログインすらできません。
行政書士は、このID取得支援からシステムへの事業者登録までを代行します。
課題3:現職者への「配置転換」のハードル
2026年の施行後、既存の従業員に対しても順次確認を行う必要があります(経過措置あり)。
もし長年勤めているベテラン社員に犯歴が見つかった場合、対応は非常にデリケートです。
解雇は「最後の手段」であり、まずは「こどもと接しない業務」への配置転換を検討しなければなりません。しかし、採用時点で職種や業務を限定した雇用契約を締結している場合など、本人の同意なく異動させることは法的に困難なケースがあります。
この課題に対応するための就業規則変更や契約書の見直しは、社労士に助言を求めることでリスクを軽減することが可能となります。
課題4:従業員への効果的な研修
認定申請に際し、従業員への教育研修が必要となります。
この研修は、当然ながら「ただ受講するだけ」では意味がありません。ロールプレイやケーススタディなど、こどもへの関わり方やその心理、またガイドラインに記載されているようなリスクのある言語・非言語コミュニケーションを振り返るなど、受講することで従業員の意識や行動が変容する研修でなければなりません。
こういった研修を効果的に企画・実践するために、心理の専門家である公認心理師の知識が役に立ちます。
3. 認定取得までの「3ヶ月」標準スケジュール
専門家に依頼した場合、どのようなスケジュールで進むのでしょうか。
標準的な「3ヶ月(12週間)モデル」をご紹介します。
| 期間 | 実施内容 |
| 【1ヶ月目】 現状分析とID取得 |
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| 【2ヶ月目】 規程作成と社内整備 |
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| 【3ヶ月目】 運用開始と申請 |
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4. トリプルライセンス・サポートの強み
通常、これらを網羅的に行うには「行政書士事務所」「社労士事務所」「心理や人権に関する研修講師」と契約し、それぞれと打ち合わせをする必要があります。これは経営者にとって大きな負担です。
当事務所では、代表が「行政書士」「社会保険労務士」「公認心理師」の3つの国家資格を保有しています。
ワンストップだからできること
- 矛盾のないルール作り:
行政への申請書類(行政書士)と、社内の就業規則(社労士)の整合性を、一人の専門家が担保します。 - 実効性のある研修:
法的な義務(行政書士)を満たしつつ、心理学的な知見(公認心理師)に基づいた「犯罪抑止や人権意識の向上のための研修」を提供します。 - コストと時間の削減:
窓口が一つで済むため、打ち合わせの手間やコストを削減できます。
まとめ:認定は「信頼」への投資
日本版DBSの認定取得は、単なるコストではありません。
「当社は国が認めた「こどもの安全を守るための制度」を備えた安全なスクールです」と胸を張って言えることは、保護者からの信頼獲得、優秀な人材の採用、そして何より「こどもの安全基地」としての健やかで豊かな成長・発達を見守るための投資です。
※本記事の内容は、令和8年1月27日現在における下記の資料に基づいたものです。
・こども性暴力防止法施行ガイドライン
・横断指針