日本版DBSとこどもの最善の利益 意見表明を事業運営に生かすには

日本版DBSとこどもの最善の利益 意見表明を事業運営に生かすには

日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定は、犯罪事実確認を行うだけで完結するものではありません。認定を受けたあとも、こどもが安心して学び、遊び、成長できる環境を整え続けることが求められます。そのための視点として欠かせないのが、「こどもの最善の利益」と「こどもの意見表明」です。この記事では、この2つを事業所のルールづくりに生かす考え方を解説します。

こどもは「守られる対象」であり「意見を持つ主体」

こどもは大人に守られる存在であると同時に、自分に関わることについて意見を表明し、その意見を尊重される主体でもあります。子どもの権利条約は、こどもに関わるすべての活動で「子どもの最善の利益」を第一に考えること(第3条)や、自分に影響を与えることについて自由に意見を表す権利(第12条)、あらゆる形態の性的搾取・性的虐待から守られる権利(第34条)を定めています。

子どもの権利条約の4つの一般原則

子どもの権利条約には、すべての権利の土台となる4つの一般原則があります。差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命・生存・発達に対する権利(第6条)、子どもの意見の尊重(第12条)です。日本版DBSへの対応は、性暴力を防ぐための仕組みづくりであると同時に、こうした原則を日々の事業運営の中で具体的な形にしていく取組みでもあります。ルールや対応を決めるときに「これはこどもにとって最善か」「こどもの意見を聴いたか」と問い直すことが、判断の軸になります。

ルールを変えるとき、こどもの声を聴く

日本版DBSへの対応では、服務規程などで、スタッフが守るべき行動のルールを見直すことになります。たとえば、講師がこどもと休日にオンラインゲームをしていた場合、新しいルールのもとでは、それが「不適切な行為」として扱われるかもしれません。こうしたルールの変更は、こどもの日常にも影響します。変更の内容を、こどもの年齢や発達段階に合わせて分かりやすく伝え、こども自身がどう感じるかを聴く機会を設けることが大切です。

意見を聴く方法の例

  • アンケート(無記名を原則とし、書きたい人だけ名前を書ける形にする)
  • 年齢に合わせた説明会
  • こどもの意見を代弁し、表明を支える人(アドボケイト)の活用

アンケートを作るときは、ひらがなの使い方や文章の量を年齢に合わせ、紙、Webフォーム、目安箱など答えやすい方法を選びます。どこに、いつまでに提出すればよいかも忘れずに書いておきましょう。

アドボケイトとは、こどもの気持ちや意見を聴き取り、こどもに代わって、またはこどもと一緒に周囲に伝える役割を担う人です。自分の考えを言葉にすることが難しいこどもにとって、大きな支えになります。アドボカシーの考え方と法律上の位置づけは、子どもアドボカシーと意見表明権の記事で詳しく解説しています。

なお、ここでいう意見を聴く仕組みは、被害を相談するための窓口とは目的が異なります。ルールの見直しや運用方針について、こども自身が意見を伝えるための仕組みとして、相談窓口とは分けて設けておくと、こどもにとっても分かりやすくなります。

聴いた声はフィードバックする

こどもの声を聴いたあとは、ルールに反映できたこと、できなかったことを、こどもに分かる言葉で伝えます。「せっかく声を上げたのに何も変わらなかった」と感じさせないことが、次の意見表明につながります。

また、こどもの声を聴くことと、こどもに必要以上に語らせることは別です。聴き方そのものがこどもの負担にならないよう、答えたくない質問には答えなくてよいことを伝えるなどの配慮も欠かせません。

こどもの声を反映したルールは、スタッフにとっても「なぜこのルールがあるのか」を理解する手がかりになります。ルールが一方的に押し付けられたものではなく、こどもと一緒に作ったものだと感じられれば、現場での定着も進みやすくなります。

万一のときこそ「最善の利益」

性暴力の疑いが生じたときは、こどもの意向を確認しながら対応方針を決め、その方針を分かりやすく説明することが大切です。相談したことで不利益を受けないようにすること、うわさの広がりによる二次被害を防ぐこと、転校や卒業などで環境が変わるときにも支援が途切れないよう関係機関と連携することも、「こどもの最善の利益」を実践する場面です。

まとめ

こどもの声が届く事業所では、スタッフも「こどもが実際にどう考えているか」を知ることができ、専門職としての行動や成長にもつながります。規程を整えるときこそ、こどもの最善の利益と意見表明を、事業運営の仕組みの中に組み込んでいきましょう。

小さな事業所で今日からできる、こどもの声の聴き方

こどもの意見を聴くことは、大きな仕組みがなくても始められます。教室や施設の規模に合わせて、無理なく続けられる方法を選ぶことが大切です。

始めやすい方法の例

  • 意見箱やアンケート:その場で口に出しにくいこどもも、書く形なら伝えやすくなります。名前を書かなくてよい形にすると、本音が出やすくなります。
  • 短い個別の声かけ:活動の終わりに、「今日はどうだった」と一言たずねるだけでも、こどもの様子をつかめます。
  • 年齢に合わせた工夫:小さなこどもには、絵やシールで気持ちを示してもらうなど、言葉以外の方法も役立ちます。

聴くときに気をつけたいこと

大人が期待する答えに誘導しないこと、こどもの意見を否定せずに受け止めることが大切です。また、意見を聴いたのに何も変わらないと、こどもは「言っても無駄だ」と感じてしまいます。すべてを実現できなくても、聴いた内容にどう対応したか、あるいは対応できない理由を、こどもにわかる言葉で伝えてください。

性被害につながる話が出たとき

意見を聴くなかで、こどもが性被害やその疑いに関わる話をすることがあります。そのときは、聞いた大人が一人で抱えこまず、事業所で定めた相談窓口や責任者に速やかにつなぐことが大切です。こどもに何度も同じ話をさせないよう、聞いた内容は、日時とこどもの言葉をそのまま、記録に残しておきます。問いつめたり、話を疑ったりしてはいけません。

こどもの声を聴く取り組みは、日本版DBSの防止措置とも深くつながっています。こどもが話しやすい環境をつくることが、被害の早期発見にもつながります。

意見を聴く取り組みを続けるために

最初から大がかりな仕組みを作ろうとすると、続かなくなります。まず一つの方法を選んで試し、うまくいかない点があれば直していくという進め方がおすすめです。担当者を決め、聴いた声と対応の記録を残しておくと、事業所として取り組んできたことを、保護者や関係者に説明する材料にもなります。

こどもの声を聴く取り組みは、こどもを守るためだけのものではなく、こどもが安心して過ごせる場所を、こどもと一緒につくっていくためのものです。

なお、こどもの意見を聴くことと、こどもの言うことをすべて受け入れることは同じではありません。安全や健康にかかわることなど、大人が責任を持って判断すべき場面では、理由をこどもに丁寧に説明したうえで、大人が決める必要があります。意見を聴いたうえで、なぜそう決めたのかを伝える姿勢が、こどもとの信頼を深めます。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順番を確認できます。

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