
こども性暴力防止法(日本版DBS)の認定を受けたいものの、規程づくりや申請の入力まで社内で抱えるのは難しい。そこで認定申請を外部に代行してもらうことを考えたとき、最初に知っておきたいのは「どこまで任せられて、どこからは自社で行うのか」です。この線引きがあいまいなまま依頼すると、申請の直前になって社内の作業が残っていることに気づく、ということが起こり得ます。
結論からお伝えすると、こども家庭庁のQ&A(応用編10-3)では、交付された犯罪事実確認書の閲覧以外の業務は行政書士及び弁護士に委託できるとされています。ただし、情報管理措置の全ての業務を他の事業者に委託することはできません。また、GビズIDの取得、手数料の支払い、従事者の研修の受講、事業の実態の説明は、事業者自身が行う作業です。
この記事では、認定申請代行で外部に任せられる作業と事業者が行う作業を作業分担表で示し、代行の範囲の考え方と、依頼する前に社内で決めておくことを説明します。
認定申請代行とは|こども性暴力防止法で外部に任せられる範囲
認定申請代行は、こども性暴力防止法の認定申請に必要な書類の作成や、こまもろうシステムでの申請手続を、外部の専門家に任せることです。法律上、認定を受けるかどうかは事業者の任意で、Q&A(基礎編4-8)でも「認定申請は任意となります」とされています。任意の手続ですが、申請するのであれば、申請書や添付書類の準備は避けて通れません。
外部に任せられる範囲の基準になるのが、Q&A(応用編10-3)です。ここでは「交付された犯罪事実確認書の閲覧以外の業務については、行政書士及び弁護士に委託することが可能です」と示されています。続けて「ただし、情報管理措置の全ての業務を他の事業者に委託するようなことはできません」とされています。
もう一つの基準が、誰に頼めるかです。Q&A(応用編10-3-2)では、行政書士法により、行政書士・行政書士法人・弁護士・弁護士法人以外の者は、報酬を得て官公署に提出する書類を作成できないとされ、認定申請に関する書類もこれに当たると解されています。代行を頼む相手が書類の作成まで担えるかは、この点で確かめます。行政書士が担う業務の詳しい内容はこども性暴力防止法で行政書士が担う業務で説明しています。
認定申請代行の作業分担表|任せられる作業と事業者が行う作業
認定申請の手続は、こども家庭庁のガイドライン(図表14)とこまもろうナビで、GビズIDの取得から申請結果の受領までの流れが示されています。この流れに沿って、外部に任せられる作業と事業者が行う作業を分けると、次のようになります。
| 作業 | 外部(行政書士)に任せられること | 事業者が行うこと |
|---|---|---|
| 対象事業・従事者の範囲の確認 | 要件への当てはめの整理と助言 | 事業内容・指導の場所・教える人数などの実態の説明 |
| 児童対象性暴力等対処規程・情報管理規程 | 規程の作成 | 現場の実態の説明、内容の確認、規程どおりの運用 |
| GビズIDの取得 | 取得手順の案内 | 事業者として取得(マイナンバーカードが必要) |
| 事業者アカウントの登録・権限設定 | 登録の手順の案内 | 担当者ごとの権限を決めて設定 |
| 申請書記載事項の入力・添付書類の提出 | 申請書類の作成と提出 | 定款・登記事項証明書などの用意、誓約書の内容の確認 |
| 手数料の支払い | 金額と支払いの時期の案内 | 1事業3万円をペイジーで支払う |
| 従事者の研修 | 受講の段取りの助言 | 申請時に働いている従事者全員の受講を完了させる |
| 補正指示・国からの問い合わせ | 補正の書類の作成と対応 | 事実関係についての回答 |
| 犯罪事実確認書の閲覧 | 任せられない(応用編10-3) | 事業者内の必要最小限の者が閲覧 |
| 情報管理措置 | 全ての業務を任せることはできない | 管理責任者の設置と、情報管理規程の遵守 |
表のとおり、書類を「作る」作業と、申請や補正の「手続」は外部に任せられます。一方で、事業者として身元を証明する作業(GビズIDの取得)、お金を払う作業(手数料)、人が学ぶ作業(研修)、情報そのものを扱う作業(犯罪事実確認書の閲覧)は、事業者に残ります。申請の手続全体の流れは認定申請の具体的手続きで確認できます。
認定申請代行でも事業者自身が行う作業と、その理由
GビズIDの取得と手数料の支払い
こまもろうシステムへのログインには、事業者のGビズIDが必要です。GビズIDは事業者を識別するためのものなので、事業者自身が取得します。取得にはマイナンバーカードが必要です。すでにGビズIDプライムを持っている場合は、それを使って複数の事業を管理でき、新たに取得する必要はないとされています(Q&A応用編8-15)。取得とその後の事業者情報の登録はGビズIDプライム取得とこまもろう事業者情報登録で手順を説明しています。
手数料は、申請時に1事業あたり3万円です(Q&A基礎編4-3)。複数の事業を行う場合は事業ごとに必要ですが、同じ事業を複数の事業所で行う場合は1つの事業として申請します(基礎編4-5)。認定の更新はなく、犯罪事実確認などの手続に手数料はかかりません(基礎編4-6)。
従事者の研修の受講
認定申請の前に研修が必要なのは、申請時に現に業務に従事させている者です(Q&A基礎編5-12)。研修は外部に「代わりに受けてもらう」ことができないため、受講の日程を組み、全員の受講を完了させるのは事業者の作業です。研修時間は労働時間に含まれるとガイドラインで示されているため、勤務の予定に組み込んで考えます。
犯罪事実確認書の閲覧と情報管理
認定後に行う犯罪事実確認では、交付された犯罪事実確認書の閲覧は外部に委託できません(応用編10-3)。ガイドラインでも、犯罪事実確認記録等の情報管理業務を他の事業者に委託することは、第三者提供の禁止に該当する例として挙げられています。また、犯罪事実確認記録等を弁護士・弁護士法人に提供できるのは、裁判手続への対応が想定される場合に限られます(応用編8-25)。閲覧する担当者は、事業者内で最小限の人数に絞ることが求められています。
誓約書の内容の確認
添付書類には、欠格事由に該当しない旨の誓約書があります。欠格事由は、認定等の取消しから2年を経過しない者、この法律の規定により刑に処せられ5年を経過しない者、これらに該当する役員がある法人などです(法第20条第2項)。書類の形を整えるのは外部に任せられますが、誓約する内容が事実かどうかは事業者と役員自身にしか分かりません。役員の略歴等の書類とあわせて、内容を事業者側で確かめてから提出します。
認定申請代行を頼む前に社内で決めておくこと
作業分担表で事業者に残る作業は、依頼したあとに慌てて決めるより、相談の段階で社内の担当者を決めておくと進めやすくなります。決めておきたいのは次の4点です。
- GビズIDの取得と手数料の支払いを担当する人
- こまもろうシステムで、どの担当者にどの権限を設定するか(犯罪事実確認書を閲覧できる人を最小限にする)
- 申請時に働いている従事者全員の研修の受講日程
- 事業の実態(教える内容・期間・場所・人数)を説明できる人
規程の作成を任せる場合でも、規程に書く相談窓口の担当者や報告の流れは、事業者の実態に合わせて決める必要があります。代行先は規程を文章にしますが、誰を相談員にするか、どの場面で誰に報告するかを決めるのは事業者です。
なお、就業規則の作成・変更(労働基準監督署へ届け出る書類)は社会保険労務士の業務です。服務規律や就業規則の見直しは必要ですが、認定申請時の提出は不要とされています。認定申請の代行と就業規則の見直しを同じ相手に頼めるかも、依頼前に確かめておきます。
まとめ|認定申請代行で任せられる作業と事業者が行う作業
認定申請代行で外部に任せられるのは、児童対象性暴力等対処規程・情報管理規程や申請書類の作成、こまもろうシステムでの提出、補正指示や国からの問い合わせへの対応です。Q&Aでは、報酬を得て申請書類を作成できるのは、行政書士・弁護士等に限られるとされています(応用編10-3-2)。
事業者に残るのは、GビズIDの取得、1事業3万円の手数料の支払い、申請時に働いている従事者全員の研修の受講、事業の実態の説明です。認定後の犯罪事実確認書の閲覧は外部に委託できず、情報管理措置も全てを委託することはできません(応用編10-3)。この分担を前提に、社内の担当者を決めてから依頼すると、申請までの作業が止まりにくくなります。
認定申請のどの作業を任せて、どの作業を社内で行うかの整理からご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。