日本版DBS|スタッフが10人未満の場合、就業規則の作成は必要?

日本版DBS|スタッフが10人未満の場合、就業規則の作成は必要?

「うちはスタッフが10人もいない。就業規則は作っていないけれど、日本版DBSの準備では必要なの?」。学習塾、スポーツクラブ、習い事教室、放課後児童クラブなど、小さな事業者の方から、よくいただくご質問です。結論からお伝えすると、法律上、就業規則の作成が求められるのは常時10人以上の事業場です。ただし、日本版DBSに対応する場合は、10人未満でも、就業規則(または同じ役割を果たすもの)を整えておくことを強くおすすめします。この記事では、その理由と、小さな事業者が無理なく進める方法を、国の資料をもとに整理します。

結論|義務はない。でも、ないと困る場面があります

  • 就業規則の作成・届出の義務:労働基準法で、常時10人以上の労働者を使用する使用者に求められています。10人未満には、この義務はありません。
  • 日本版DBSでの扱い:こども家庭庁の資料を確認した範囲では、「常時10人未満の事業者は対象外」「就業規則の整備を免除する」といった例外は見当たりませんでした。
  • 実務上の差:就業規則がないと、懲戒処分などを行うときの根拠が弱くなります。誓約書や契約書で補える部分もありますが、補えない部分もあります。

まず確認|「10人」の数え方

労働基準法第89条は、「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、…就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定めています。この「10人」は、次のように数えます(労働局の説明にもとづく整理です)。

  • パート・アルバイトも含めます。雇用形態に関係なく、雇用している労働者が常態として10人以上いるかどうかで判断します。
  • 事業場ごとに判断します。教室や店舗が複数ある場合は、場所的に独立した事業場ごとに数えます。
  • 「常態として」の人数です。期間の定めのある労働者の契約が終われば、また10人未満に戻るような場合は、10人以上にはあたりません。

業務委託の講師やボランティアは、契約の名前ではなく実態で判断されますが、一般には労働者にあたりません。ただし、日本版DBSの認定の対象になるかを数えるときは、雇用の有無を問わず、含められる場合があります。この点は、のちほどご説明します。ボランティアを受け入れるときの考え方は、こども性暴力防止法 ボランティアに対しての注意点で整理しています。

日本版DBSの制度は、10人未満を免除していません

日本版DBS(こども性暴力防止法)は、2026年12月25日に施行される予定です。学校設置者等には法律上の取組が求められ、学習塾やスポーツクラブなどの民間教育保育等事業者は、国の認定を受けた場合に、犯罪事実確認などの取組を行う仕組みです。認定を受けるかどうかは、事業者が選べます。

認定の対象になる事業かどうかは、従業員の人数ではなく、事業の中身で決まります。国の資料では、たとえば「技芸又は知識の教授を行う者の人数が3人以上」であることが、要件のひとつとして示されています。この人数は、雇用の有無や形態を問わず、派遣労働者やボランティアも含めてよいとされています。反対に、個人(1人)だけで行う事業は、対象にあたりません。

つまり、「従業員が10人未満だから関係ない」ということはありません。教える人が3人以上いる小さな学習塾や教室は、ほかの要件を満たせば、認定の対象になりえます。

就業規則がないと、何が困るのでしょうか

日本版DBSで想定される防止措置は、内定取消し、試用期間中の解約、配置転換、普通解雇、懲戒処分といった、雇用に関わる対応です。国の資料には、「法に基づく防止措置であっても、労働関係法令の制約が免除されるわけではなく、労働関係法令に沿って対応する必要がある」と書かれています。

ここで、就業規則の有無が差になります。

  • 懲戒処分:国の資料は、懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則で懲戒事由と懲戒の種類を定め、それを労働者に周知しておく必要があるとしています。就業規則がなければ、懲戒処分の根拠を示すことが難しくなります。
  • 内定取消し:誓約書や内定通知書に取消事由を書いていれば、就業規則に書いていなくても、内定取消しができるとされています。この部分は、書類で補えます。
  • 試用期間中の解約:国の資料は、試用期間中の解約事由や懲戒事由として「重要な経歴の詐称」を、就業規則に定めておくことも重要としています。
  • 犯罪事実確認への協力:確認の手続きに従業員が協力する旨は、就業規則のモデル条項として示されています。ルールとして、全員に同じ形で伝えておくと、現場で迷いません。
  • 配置転換:職種を限定する合意がある人は、配置転換に本人の同意が必要になります。採用時の契約内容の確認が欠かせません。

なお、懲戒処分が有効になるには、就業規則に定めがあることに加えて、その処分が、行為の内容に見合った相当なものである必要があります(労働契約法第15条)。就業規則があれば、何でもできるわけではありません。解雇を検討するときの手続きと注意点は、日本版DBS 解雇の注意点で整理しています。

就業規則とは別に必要な「規程」があります

混同しやすい点がひとつあります。日本版DBSの認定を受けるには、次の2つの「規程」を、申請のときに提出する必要があります。

  • 児童対象性暴力等対処規程:責任者や対応者など、事業者の対応体制を定める規程です。
  • 情報管理規程:犯罪事実確認の記録などを、適切に管理するための規程です。

これらは、就業規則とは別のものです。就業規則を作らない10人未満の事業者でも、認定を受けるなら、この2つの規程は必要です。つまり、「就業規則は義務ではないから、何もしなくてよい」とはなりません。2つの規程の準備に加えて、懲戒などの根拠をどう用意するかを、あわせて考えるのが現実的です。

10人未満の事業者が選べる、3つの進め方

パターンA|日本版DBS対応の条項だけを入れた、小さな就業規則を作る

もっともおすすめしやすい形です。すべての項目をそろえた分厚い就業規則でなくても、まずは、こどもに接する職員の範囲、児童対象性暴力等と不適切な行為の禁止、犯罪事実確認の手続への協力、重要な経歴の詐称があったときの扱い、懲戒の事由と種類、の部分から整えます。労働基準法上の届出義務は10人以上の事業場の話なので、10人未満の場合の届出は、法律上は求められていません。ただし、作った規則は、全員に確実に伝えておくことが大切です。

パターンB|誓約書・契約書・求人票で補う

採用時の対応は、書類でも整えられます。国の資料では、募集要項に特定性犯罪の前科がないことなどを採用条件として書くこと、採用前の誓約書で、提出する書類や申告内容がすべて事実であることを誓ってもらうこと、内定通知書に内定取消事由として「重要な経歴の詐称」などを書くこと、が示されています。ただ、すでに働いている人への懲戒は、就業規則がないと根拠が弱くなります。書類だけで足りる範囲は、限られると考えてください。

パターンC|そもそも対象にあたるかを確認する

教える人が3人未満の事業や、個人1人で行う事業などは、認定の対象にならない場合があります。準備を進める前に、自分の事業が対象かどうかを確かめておくと、無駄な作業を減らせます。

国が示した就業規則の見直し例

こども家庭庁は、就業規則に加えることが考えられる内容を、条項例として公表しています。主な内容は次のとおりです。

  • 対象業務従事者の範囲(教室長、講師、事務員、運転手など)を明らかにする。
  • 児童対象性暴力等と、不適切な行為(私的な連絡先の交換など)を禁止する。
  • 犯罪事実確認に必要な手続への対応を、職員に求める。
  • 試用期間中の解約事由に、重要な経歴の詐称を入れる。
  • 懲戒事由に、児童対象性暴力等や、重要な経歴の詐称を入れる。

国の資料は、これらを法の施行前から適用できるよう、就業規則の附則で、施行前でも適用する旨を定めておく方法を示しています。施行日の2026年12月25日までに、時間の余裕を持って進めてください。

よくあるご質問

10人未満で就業規則を作ったら、届け出が必要ですか。

労働基準法上の届出義務は、常時10人以上の事業場に求められるものです。10人未満の事業場は、法律上は届出を求められていません。ただし、人数が常態として10人以上になったときは、届出が必要になります。

講師が全員、業務委託です。就業規則は必要ですか。

業務委託の講師は、実態として指揮命令のもとで働いている場合を除き、労働基準法上の労働者にあたらないのが一般的で、その場合は就業規則の適用の対象ではありません。ただし、日本版DBSの準備では、委託先の講師も含めて、契約の内容やルールの伝え方を確認しておくと安心です。対象業務従事者にあたるかどうかは、国のガイドラインやQ&Aで、個別にご確認ください。

とりあえず、何から始めればよいですか。

最初に、自分の事業が認定の対象かどうかを確認し、次に、いまある雇用契約書や就業規則を見直して、足りない部分を洗い出してください。施行まであと3か月の準備チェックリストも、あわせてご覧ください。

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まとめ|小さな事業者こそ、早めに就業規則と書類を整える

10人未満の事業者に、就業規則の作成義務はありません。しかし、日本版DBSに対応する場合は、懲戒などの対応の根拠を用意しておくために、就業規則(または同じ役割を果たす書類)を整えておくことをおすすめします。また、認定を受けるなら、就業規則とは別に、児童対象性暴力等対処規程と情報管理規程が必要です。

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まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順番を確認できます。

参考資料

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