日本版DBSで社労士が担う業務|就業規則・採用・現職者対応・情報管理の整え方

日本版DBSで社労士が担う業務|就業規則・採用・現職者対応・情報管理の整え方

日本版DBSへの対応では、犯罪事実確認の手続きそのものに加えて、「確認の結果をどう扱うか」を雇用のルールとして決めておくことが欠かせません。採用、配置、懲戒、情報の取扱いといった労務の場面に制度をつなげるのが、社会保険労務士(社労士)の役割です。この記事では、社労士が担う業務を、事業者が準備すべき順番に沿って整理します。

社労士が担う業務の根拠

就業規則など、労働社会保険諸法令にもとづく書類の作成は社労士の業務です(社会保険労務士法2条1項)。社労士でない者が報酬を得て業としてこれらの書類を作成することは、同法27条で制限されています。日本版DBSでは、就業規則の見直しが対応の中心になるため、社労士の関与が特に重要になります。

1.就業規則に盛り込む内容を決める

社労士は、制度に合わせて就業規則の条文を整えます。主な項目は次のとおりです。

  • 対象業務従事者の範囲:保育士や講師だけでなく、事務職員や送迎の担当者などが対象になる場合もあります。
  • 禁止される行為:性暴力だけでなく、子どもと私的な連絡先を交換するなど、そのきっかけになりうる不適切な行為も具体的に定めます。
  • 確認への協力義務:従事者が犯罪事実確認の手続きに協力しなければならないことを定めます。
  • 安全確保措置:疑いが生じたときの自宅待機や配置転換など、子どもを守るための措置の根拠を定めます。
  • 懲戒の事由と種類:懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則に懲戒の事由と種類を定め、周知しておく必要があります。

条文は、ひな型や他社の例をそのまま写すのではなく、事業所の職種や勤務形態に合わせて調整します。詳しい条文の考え方は「日本版DBSの防止措置を就業規則と整合させる実務ガイド集」で解説しています。

2.採用のルールを整える

施行後に採用する人は、原則として業務に就く前に犯罪事実確認を行います。採用募集要項に、内定後に確認を行うことと、内定取消の事由をあらかじめ示しておくことが大切です。内定の取消しは、どんな理由でも認められるわけではありません。誓約書などで事前に申告を求めておくと、後から事実と異なることがわかったときに、重要な経歴の偽りとして対応しやすくなります。また、施行後に新たに子どもと接する業務に就く人は、業務に従事する前に研修を受ける必要があります。入社時の研修の日程も、採用の手順にあらかじめ組み込んでおきましょう。

3.すでに働いている人への対応を準備する

義務対象事業者は、施行時に働いている従事者の犯罪事実確認を、施行日から3年以内に行う必要があります。現職者に対しては、制度の説明と、確認への協力をお願いする手順が必要です。確認の結果、特定性犯罪の前科があるとされた場合でも、直ちに解雇できるとは限りません。事前にどのような準備をしていたかによって、懲戒処分の有効性が変わる可能性があります。子どもと接しない業務への配置転換を優先して検討する場面も多く、職種を限定する合意がある場合などは、本人の同意が必要になることもあります。配置転換の考え方は「日本版DBSの配置転換と期間雇用」もご覧ください。解雇を検討するときの手続きと注意点は、日本版DBS 解雇の注意点で整理しています。

就業規則の面から、施行前に自己申告の仕組みを取り入れる場合の考え方は、東京都教委の自己申告確認と日本版DBSの違いもあわせてご覧ください。

4.就業規則の変更手続きを行う

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更するときに、労働者の過半数代表者などから意見を聴き、労働基準監督署に届け出る必要があります。変更後の規則は従業員に周知しなければ効力が認められにくいため、説明会などで内容を伝えておきます。

5.情報の取扱いと相談体制を整える

犯罪事実確認の記録は、特に慎重な取扱いが求められる個人情報です。閲覧できる人を限り、保管と廃棄のルールを決めて、漏えいした場合の懲戒も含めて定めます。あわせて、職員が不安や疑問を相談できる窓口と、研修の実施計画も、労務管理の一部として整えます。

まとめ

日本版DBSで社労士が担うのは、就業規則の見直し、採用と現職者への対応、変更手続き、情報の取扱いのルールづくりです。認定申請の書類作成は行政書士、個別の紛争は弁護士の業務になるため、役割分担を確認して進めましょう。行政書士の業務は「日本版DBSで行政書士が担う業務」で解説しています。

日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・行政書士・公認心理師の立場から、就業規則の見直しから認定申請、職員研修までを一体でご支援しています。

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※本記事は、2026年9月28日時点で公表されているこども家庭庁の資料にもとづいています。最新の内容は、こども家庭庁の公式ページで必ずご確認ください。

よくある質問|社労士に相談する前に整理しておきたいこと

就業規則の見直しは、事業所ごとに状況が違うため、相談の前にいくつかの点を整理しておくと話が早く進みます。ここでは、よく寄せられる疑問を順に整理します。

Q.すでに就業規則があります。全面的に作り直す必要がありますか。
A.必ずしも全面改定が必要とは限りません。まず、対象業務従事者の範囲、禁止される行為、犯罪事実確認への協力、安全確保措置、懲戒の事由と種類という5つの項目について、現在の条文に足りないところがないかを点検します。足りない部分を追加し、既存の条文と矛盾しないように整えるのが基本の進め方です。

Q.従業員が10人未満の事業所でも、ルールを決める必要がありますか。
A.就業規則の作成と労働基準監督署への届出は、常時10人以上の労働者を使用する事業場が対象です。ただし、日本版DBSの対応では、子どもと接する人に守ってほしいことを、事業所の規模にかかわらず、あらかじめ書面で示しておくことが大切です。10人未満の事業所でも、就業規則に準ずる規程や誓約書などで整えておく方法があります。小規模な事業者の考え方は、スタッフが10人未満の場合の就業規則の記事でくわしく解説しています。

Q.変更するときは、どんな手続きが必要ですか。
A.就業規則を変更するときは、労働者の過半数を代表する人などの意見を聴き、変更後の内容を届け出て、従業員に周知するという流れになります。内容が従業員にとって不利益になる場合は、変更の必要性や内容の相当性についても説明できるようにしておきます。

Q.パートやアルバイト、ボランティア、業務委託の人にも適用されますか。
A.就業規則が直接及ぶのは、その事業所で雇用されている人です。雇用関係にない人については、契約書や覚書、活動のルールなど、別の形で取り決めを用意する必要があります。誰が子どもと接する立場にあるのかを、雇用形態の一覧とあわせて確認しておくと、漏れを防げます。ボランティアを受け入れるときの考え方は、こども性暴力防止法 ボランティアに対しての注意点で整理しています。

相談の前に用意しておくとよい資料

  • 現在の就業規則と、賃金規程などの関連する規程
  • 雇用契約書や労働条件通知書のひな型
  • 組織図と、職種ごとの人数がわかる資料
  • 子どもと接する業務の内容がわかる資料(勤務表や業務分担表など)

これらがそろっていると、どこを直せばよいのかを短時間で見きわめやすくなります。資料が十分にそろっていなくても、ご相談は可能です。

相談から見直しまでの進め方の目安

見直しは、次の順番で進めると、途中で戻る手間が少なくなります。

  1. 子どもと接する業務と、その業務に就く人の範囲を確認する
  2. 現在の就業規則との差を洗い出し、追加する条文の方針を決める
  3. 条文案を作り、従業員の代表の意見を聴く
  4. 変更を届け出て、従業員に周知する

条文の作成そのものよりも、現場の実態と条文がずれていないかを確かめる工程に時間をかけることが、あとでのトラブルを防ぐ近道です。

認定を受けているかどうかで、採用の場面での対応がどう変わるかは、「日本版DBS認定の有無で変わる、性犯罪歴のある求職者への対応」で整理しています。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順番を確認できます。

参考資料

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