
2026年(令和8年)12月25日に施行されるこども性暴力防止法(日本版DBS)では、民間教育保育等事業者が国の認定を受けることで、従事者の犯罪事実確認や各種安全確保措置を実施できるようになります。認定の取得は任意ですが、認定を受けた事業者は法律上の義務として適正な管理・運用を継続しなければなりません。本記事では、法第32条に基づく認定取消しの要件や関連する罰則、認定を維持するための実務上の留意点について解説します。(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法・ガイドライン」)
認定取消しの制度的枠組み(法第32条)
認定を受けた事業者が法令違反や体制の不備を生じさせた場合、国(内閣総理大臣/こども家庭庁)により認定が取り消されることがあります。法律上、認定の取消しには必ず取り消さなければならない「必要取消し」と、事情に応じて判断される「裁量取消し」の2種類が規定されています。また、認定が取り消された場合は、法令の定めに従ってその事実が公表されることになります。
必ず取り消される場合(法第32条第1項:必要取消し)
次の事由に該当した場合、国は認定を取り消さなければならないと定められています。
- 不正の手段による認定取得:偽りその他不正の手段によって認定を受けたことが判明した場合
- 欠格事由への該当:法第20条第2項第2号・第3号の欠格事由(本法違反による刑の執行終了等から5年未経過、法人の役員が所定の欠格事由に該当する場合)に該当するに至った場合
- 犯罪事実確認義務違反:法第26条第1項から第3項または第6項に違反し、新規従事者・現職者の確認や定期的な再確認を行っていない場合
- 命令違反:法第30条の規定に基づく適合命令や是正命令などの改善命令に違反した場合
取り消されることがある場合(法第32条第2項:裁量取消し)
次の事由に該当する場合、国は情状や改善の見込み等を考慮し、認定を取り消すことができると定められています。
- 認定基準への不適合:体制の形骸化などにより、法第20条第1項各号に掲げる認定基準(研修の実施体制、情報管理措置、早期把握措置など)に適合しなくなった場合
- 報告義務違反・検査忌避:国から求められた報告の提出を怠ったり虚偽の報告を行ったりした場合、または立入検査を拒んだり妨げたりした場合
- その他の法令違反:事業者の対象区分に該当しなくなった場合や認定事業を行っていない場合、変更届・帳簿・定期報告・情報管理等について法第32条第2項所定の違反があった場合
運用の不備が確認された場合、直ちに認定が取り消されるケースだけでなく、まずは法第30条に基づく適合命令や是正命令が出され、改善が図られない場合に取消しへと進む手続きもあります。ただし、虚偽申請や重大な義務違反などについては、事前の是正命令を経ずに直接取消しが行われる場合もあります。
現場で留意すべき4つの実務的ポイント
1. 犯罪事実確認の適切な実施
採用手続きそのものが禁止されているわけではありませんが、確認対象となる従事者を対象業務に従事させるにあたっては、「実際の業務を開始する前までに確認を完了させること」が原則です。知人や急募であることなどを理由に確認を怠ることは法令違反となります。なお、急な欠員等で業務開始前の確認が困難な場合には、法令上の要件を満たす場合に限り、一時的に児童等と1対1にさせないなどの安全確保措置を講じたうえで後から確認を行う「いとま特例」が認められています。
2. 認定基準に沿った安全確保措置の継続
認定申請時に定めた「児童対象性暴力等対処規程」に基づき、従事者への定期的な研修、日常の観察や面談を通じた早期把握、相談窓口の周知などを継続して実施し、受講履歴や対応記録を適切に残しておく必要があります。
3. 虚偽申請や事実の歪曲の防止
虚偽の内容など不正な手段で認定を受けた場合は、必要取消しの事由となります。窓口の設置状況や研修の実施体制など、常に組織の実態に即した内容で申請・運用を行ってください。
4. 是正命令や指導への適切な対応
所轄庁による検査や指導において運用の不備を指摘された場合は、放置することなく、指示された期限内に体制の改善や報告を確実に行うことが重要です。
機微情報の保護と行為態様に応じた罰則
犯罪事実確認記録等(確認書およびその記載事項)は、従事者の人権に深く関わる極めて機微性の高い個人情報です。法律では、情報の漏えいや不正利用を防ぐため、行為の態様に応じた個別の罰則が定められています。
- 自己または第三者の不正な利益を図る目的での提供(法第43条):2年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
- 正当な理由のない秘密の漏示等(法第39条違反・法第45条第2項):1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
- 法定期間経過後の廃棄・消去義務違反(法第38条違反・法第46条):50万円以下の罰金が科されます。
例えば、記録媒体の紛失が発生した場合、直ちに上記の刑事罰が科されると断定されるわけではありませんが、漏えいのおそれがある重大事態として直ちにこども家庭庁へ報告する義務が生じます(法第13条)。また、従事者の前科について業務外で口外する行為などは、法令違反や処罰の対象となり得ます。記録はシステム上での閲覧を基本とし、紙や外部媒体への安易な保管を避けるとともに、定められた期限(法第38条)に従って速やかに消去・廃棄してください。
帳簿の備付け・保存義務と報告体制(法第28条)
認定事業者には、日頃の適切な管理を証明するため、法第28条第1項に基づき、犯罪事実確認の実施状況を帳簿に記録し、保存する義務があります。また、同条第2項に基づき、犯罪事実確認や安全確保措置の実施状況、確認記録等の管理状況を定期的に報告します。国から個別に報告や資料提出を求められた場合の対応とは別の義務です。提出時期や様式は公式の案内で確認してください。
まとめとサポート窓口のご案内
日本版DBSの認定取得は、法令に沿った安全管理体制を継続して運用していく出発点です。日々の教育・指導業務と並行しながら、各種記録の作成・保管、定期的な研修の実施、厳格な情報管理を維持していくことが求められます。
当事務所では、認定取得時の書類作成支援だけでなく、認定後の体制整備や運用状況の点検に関するサポートも行っています。現在の管理体制に不安がある事業者様に向けて、既存の体制確認やリスクの洗い出しを行う無料診断の受付を行っております。なお、専門家による助言や診断は運用の改善や手続きを円滑に進めるためのものであり、認定の継続や将来の事故防止を法的に保証するものではありません。各事業所の実情に合わせてご活用ください。
※本記事の内容は、令和8年1月27日時点におけるこども性暴力防止法施行ガイドラインおよび横断指針の公表資料に基づいています。