
こども性暴力防止法のもとで事業者に求められる安全確保措置の中でも、施設環境の整備と服務規律の策定は未然防止の基本となる取り組みです。国の横断指針では、ハード面とソフト面の両面から現場で参考にできる具体的な実践例が示されています。教育や保育の現場において、事業者の実態に合わせて導入できる未然防止策を整理しました。(出典:こども家庭庁「児童対象性暴力等の防止等に関する横断的指針」)
未然防止の基本方針:性暴力を許さない姿勢の明確化
従事者による子どもへの性暴力を未然に防止するためには、事業者として性暴力を決して許さないという姿勢を組織の内外に明確に示すことが大切です。正規職員だけでなく、パート、アルバイト、ボランティア等を含むすべての従事者を対象として、不適切な行為を抑止するとともに、そうした行為が生じやすい環境や組織体制のリスクを点検・解消することが求められます。
服務規律の整備:具体的なルールによる行動基準の明確化
就業規則や服務規程、業務マニュアルなどの文書において、性暴力防止のための行動規範を具体的に定め、周知徹底することが推奨されます。以下に挙げる個別のルールは、すべてが一律の法定義務というわけではなく、各事業者が現場の状況に合わせて定める実務上の参考例です。
| 分類 | 具体的なルール例 |
| スマートフォンとSNS | 子どもと接する場所での私用スマートフォンの使用を控える、私的な連絡先交換を行わないなど |
| 子どもとの接し方 | 業務外で私的に子どもと会わない、原則として密室で子どもと1対1の状況を作らないなど |
| 身体接触 | 業務上不要な身体接触を行わない。保育や指導上必要な場合も周囲の目が届く状態を確保するなど |
| 移動・送迎 | 不必要に子どもと1対1で車両移動を行わない、送迎記録を管理職へ共有するなど |
採用時にこれらのルールを書面で交付し、内容を確認したうえで誓約書を提出してもらう運用も有効です。客観的なルールをあらかじめ共有しておくことは、いわれのない批判や疑いから従事者自身を守ることにもつながります。
施設環境の整備:死角を減らし、見守りの目を確保する
横断指針では、過去に性暴力が発生した場所の例として、放課後の教室、空き教室、更衣室、トイレ、体育館倉庫、送迎車内などが挙げられています。人通りの少なくなる時間帯や、子どもと1対1になりやすい環境には配慮が必要です。
ハード面の工夫と不必要な密室の防止
- プライバシーの保護や非常時の避難安全、各部屋の用途に配慮しつつ、不必要な密室状態を作らない構造や運用を検討する
- 日常的に使用しない空き部屋は施錠し、鍵の管理窓口を一元化する
- 家具や間仕切りの配置変更、カーブミラーの設置などにより、施設内の死角をできる限り減らす
- 施設の改修や建て替えの際には、廊下側から室内の様子が把握しやすいガラス窓の配置などを検討する
ソフト面での日常的な見守り
- 安全責任者や担当職員が、施設内の死角になりやすい場所を定期的に見回る
- 巡回の時間帯を適度に変動させ、見守りの実効性を高める
- トイレや更衣スペース等において、不審な機器や盗撮の兆候がないか定期的に点検する
- 必要に応じてセンサーライト等の防犯設備を組み合わせ、抑止効果を高める
防犯カメラ活用の留意点:プライバシー配慮と適切な管理
防犯設備の設置は不適切な行為の抑止につながるほか、万が一の事案発生時における客観的な事実確認や証拠保全にも役立ちます。ただし、導入にあたっては個人の尊厳やプライバシーへの配慮が不可欠です。
- トイレや更衣室などの私的空間の内部は一切撮影せず、出入口付近を撮影する場合も内部の様子が映り込まない画角に配置する
- 利用目的をあらかじめ明確にし、防犯カメラの映像を閲覧できる担当者を責任者等に限定する
- 保存期間を管理規程等で定めて計画的に上書き・消去を行い、必要以上の長期保存を避けつつ、事案やトラブル発生時には必要な範囲で確実に証拠保全を行う
- 目的外の閲覧や不正な持ち出しを防ぐため、機器や録画データに適切なアクセス制限を設ける
意識啓発と安全な環境づくり
施設内の見やすい場所に性暴力防止に関するメッセージや相談窓口の案内を掲示するなど、日常的に意識を高める工夫も効果的です。施設全体で安全への取組を伝えることが、子どもにとっても従事者にとっても安心できる環境づくりを後押しします。
まとめ
服務規律の明確化と施設環境の点検は、研修や早期発見の体制づくりとともに未然防止を支える基盤となります。自施設の規模や構造、業務内容に合わせて実践可能な対策を整えてください。日本版DBS認定申請の手続きもあわせてご確認いただけます。
※本記事の内容は、令和8年3月29日時点におけるこども性暴力防止法施行ガイドラインおよび横断指針の公表資料に基づいています。