
スクールカウンセラー(SC)の面談は、ほとんどの場合、相談室で子どもと一対一になって行われます。話の内容を守るためには、扉を閉めることも必要です。一方で、日本版DBS(こども性暴力防止法)の施行ガイドラインは、「不必要に児童等と密室で二人きりになろうとする」ことを「不適切な行為」の例に挙げています。では、密室が仕事として欠かせない場では、何をすればよいのでしょうか。この記事では、法律とガイドラインの考え方を整理し、学校とSCが今日から取り組めるヒントをまとめます。
スクールカウンセラーは日本版DBSの対象か
こども性暴力防止法では、学校は制度の対象となる事業者です。そのうえで、学校で働く人のうち誰が「対象業務従事者」になるかは、業務の中身で決まります。スクールカウンセラーは、施行規則で「教員等」に含まれる職員として定められており、こども家庭庁のQ&Aも、学校で従事しているスクールカウンセラーは一律に対象になると答えています(施行規則第1条第2号、Q&A 応用編3-21)。一方、スクールソーシャルワーカーは、子どもに直接接するか、先生を支援するかなど業務の内容によって、「支配性・継続性・閉鎖性」の3つの要件をすべて満たすかどうかで対象を判断します。
支配性は、子どもに対して指導や助言をする立場にあること。継続性は、同じ子どもと継続的に関わること。閉鎖性は、ほかの大人の目が届きにくい状況で関わることです。継続して個別面談を行うSCの仕事は、とくに継続性と閉鎖性の要素を含みやすいといえます。SCは対象になる前提で、犯罪事実確認と研修の準備を進めます。スクールソーシャルワーカーについては、学校ごとに実際の業務に照らして対象かどうかを判断し、その理由を記録しておくことが大切です。
「不適切な行為」と密室の関係
ガイドラインでいう「不適切な行為」とは、それ自体は性暴力にあたらないものの、業務上必ずしも必要とはいえず、続いたり発展したりすると性暴力につながり得る行為をいいます。例として、次のようなものが挙げられています。
- 私的な連絡先(SNSやメールアドレスなど)を交換し、私的なやり取りをする
- 不必要に体に触れる
- 不必要に密室で二人きりになろうとする(用務がないのに別室に呼び出すなど)
- 私物のスマートフォンなど、ルール外の方法で写真や動画を撮る
ここで大切なのは、「不必要に」という言葉です。ガイドラインは、業務上の必要性を踏まえて、事業者ごとに「不適切な行為」の内容を定め、服務規律などに反映するよう求めています。つまり、密室での面談そのものが一律に禁止されているわけではありません。必要な密室と、必要のない密室を、学校があらかじめ言葉にして分けておくことが出発点になります。不適切な行為の定め方は、日本版DBSの「不適切な行為」とは?でも解説しています。
なぜ相談室は「密室」になるのか
子どもが家庭のことや友人関係、性の悩みなどを話すには、ほかの人に聞かれないことが欠かせません。公認心理師には、公認心理師法で秘密を守る義務が定められています。相談室の扉を開けたままにしたり、ほかの職員を同席させたりすれば、子どもは本当に困っていることを話せなくなります。
ただし、閉じた空間は、使い方を誤れば、子どもを傷つける場にもなり得ます。ここで気をつけたいのは、相談室の安全対策が、子どもを人目にさらす形になってはいけないということです。「あの子はカウンセリングを受けている」と周りに知られることは、からかいやいじめのきっかけになりかねません。誰が相談しているかという事実そのものも、守るべき秘密です。だからこそ、子どもを見えるようにするのではなく、SCの関わり方を見えるようにする。これが、密室が必要な職場での基本の考え方です。
密室が必要な場で取り組みたい6つのこと
1.面談のルールを文章にする
面談を行う部屋、時間帯、1回の目安時間、面談の申し込み方法を決め、服務規律や相談室の運営要領に書いておきます。勤務時間外や休日、校外で子どもと二人きりで会わないことも明記します。ルールが文章になっていれば、ルールの外の行動に周りが気づきやすくなります。
2.子どもが人目にふれない部屋と動線にする
相談室は、休み時間に生徒が行き交う廊下から出入りが見えにくい場所に置きます。のぞき窓や「使用中」の表示など、中に誰がいるかが周りにわかる工夫は避けます。予約の時間を少しずつずらし、相談室の前で子ども同士が顔を合わせないようにする配慮も大切です。そのうえで、扉は閉めても内側から施錠しない、非常時に管理職が入室できる手順を決めておくなど、閉じた空間を「閉じこめる空間」にしない工夫をします。施設面の工夫は、施設環境整備で性暴力を未然に防止する方法もご覧ください。
3.記録はSCが残し、名前を出さずに報告する
面談の日時・時間・場所・相手は、SC自身が記録簿に残し、鍵のかかる場所で保管します。管理職への定期的な報告は、件数や時間帯など、子どもの名前が出ない形にします。記録は、子どもの安全に関わる問題が起きたときなど、学校が決めた場面に限って、決められた人だけが確認できるようにしておきます。誰が相談しているかを職員全体に広げないことも、守秘の一部です。
4.連絡は学校の決めた方法だけにする
面談の申し込みは、相談室前の申込箱や、学校が用意したオンラインの申込フォームなど、ほかの生徒や先生に知られずに申し込める方法を用意し、連絡もその方法に限ります。私的なSNSのアカウントや個人の電話番号は交換しません。子どもの写真や動画を撮る必要がある場面も、原則としてありません。
5.子どもに「別の相談先」を伝えておく
相談室の案内には、「SCや先生とのことで嫌なことがあったら、ほかの先生や学校の外の窓口にも話していい」と書いておきます。相談先が一つしかない状態は、子どもにとって安全ではありません。複数の窓口を、子どもにわかる言葉で伝えることが大切です。
6.研修で「迷う場面」を話し合う
泣き出した子どもの背中に手を当ててよいか、面談が予定時間を大きく過ぎそうなときにどうするかなど、迷う場面を職員同士で話し合っておきます。ガイドラインも、日々のミーティングや研修で議論し、理解を深めることの大切さにふれています。あわせて、ほかのSCや外部の専門家に、子どもの名前を伏せたうえで自分の関わり方を相談する(スーパービジョン)ことも、密室での関わりを点検する方法になります。研修の進め方は、日本版DBSにおける従事者研修で紹介しています。
ルールはSC自身を守るものでもある
面談の記録やルールは、SCを疑うための仕組みではありません。子どもが相談室を安心して使い続けられるようにし、同時に、SCが誤解を受けたときに、自分の仕事が正しく行われていたことを示す支えにもなります。非常勤で複数の学校を回るSCは、学校ごとにルールが違うと迷いやすくなります。学校側から、着任時にルールを文書で伝えることをおすすめします。
着任時に学校とSCで確かめたいこと
年度の初めやSCの着任時に、次の点を学校とSCで一緒に確かめておくと、運用のずれを防げます。
- 面談に使う部屋と、使ってよい時間帯
- 面談の申し込みと連絡の方法(私的な連絡手段を使わないこと)
- 面談記録の保管場所と、記録を確認できる人・場面
- 子どもの出入りが、ほかの生徒に知られにくい動線と予約の取り方
- 子どもの安全に関わる話を聞いたときの報告先と手順
- 体にふれる場面や、予定時間を大きく超える場面での対応
- 子どもに案内する、SC以外の相談先
この確認は一度で終わらせず、学期ごとに振り返ると、実際に迷った場面をルールに反映できます。
気になる行動に気づいたら
同僚やSC自身が、ルールから外れた行動や、子どもの様子の変化に気づくこともあります。そのときは、本人に直接問いただしたり、職員が自分で事実を確かめようとしたりせず、学校が定めた手順にそって責任者へ報告します。子どもから話を聞いた場合は、同じ話を何度もさせないよう配慮し、聞いた内容をそのまま記録します。早く気づき、早く共有することが、子どもと職員の両方を守ることにつながります。
よくある質問
Q.扉を開けたまま面談しなければいけませんか。
A.いいえ。扉を開けたり、外から中が見えたりすると、話の内容だけでなく、誰が相談に来ているかまで周りに知られてしまいます。ガイドラインも扉の開け閉めまでは定めていません。扉は閉めたうえで、施錠しない、面談の時間と場所を決めておく、記録を残すなど、子どもを人目にさらさない方法で安全を確保しましょう。
Q.管理職への報告で、子どもの名前を伝えてもよいですか。
A.日常の報告は、件数や時間帯など、名前の出ない形を基本にします。子どもの安全に関わる場合など、名前を含めて共有する必要がある場面と、その相手は、学校と事前に取り決めておきましょう。
Q.SCが教育委員会に採用されている場合、ルールは誰が決めますか。
A.SCの採用の仕方は、自治体によって異なります。面談の場所や記録の扱いなど、学校の中での運用は学校が決める部分が大きいため、採用している教育委員会と学校の役割分担を確かめたうえで、学校の運営要領に落とし込むとよいでしょう。
Q.オンラインでの面談にも同じ考え方があてはまりますか。
A.画面越しでも、ほかの大人の目が届きにくい点は同じです。学校が用意したアカウントと端末を使い、実施した日時などの事実を記録するなど、対面と同じルールで運用することをおすすめします。
Q.どこから手をつければよいですか。
A.まず、相談室の面談ルールを文章にすることです。安全確保措置の全体像は、4つの「安全確保措置」、子どもの心のケアは、日本版DBSで信頼される教育機関の心理的支援をご覧ください。
日本版DBS認定運用サポートにご相談ください
日本版DBS認定運用サポートの代表は、社会保険労務士・行政書士・公認心理師で、スクールカウンセラーとして学校現場にも携わっています。相談室の運営ルールづくり、不適切な行為の定めと服務規律への反映、教職員やSCへの研修まで、現場に合わせてご支援します。まずは、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
※本記事は、2026年10月13日時点で、こども家庭庁が公表している情報にもとづいています。制度の内容や運用は変更されることがあるため、最新の内容は、こども家庭庁の公式ページでご確認ください。
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