日本版DBSの採用スケジュール|犯罪事実確認は内定後、入社の何か月前に動くか

日本版DBSの採用スケジュール|犯罪事実確認は内定後、入社の何か月前に動くか

「4月から来てもらう講師の性犯罪歴の確認は、いつ申請すれば間に合うのだろう」。日本版DBS(こども性暴力防止法)が2026年12月25日に施行されると、採用の段取りそのものを見直す必要が出てきます。結論からお伝えすると、犯罪事実確認は内定を出したあとでなければ申請できず、交付までに日本国籍の人で最長1か月、外国籍の人で最長2か月かかります。この記事では、従事開始日から逆算した採用スケジュールの立て方を整理します。

前提1:犯罪事実確認は「内定後」にしか申請できない

国のQ&Aは、新しく採用する人の犯罪事実確認は内定前にはできないとしています。性犯罪歴は極めて機微な個人情報であり、こどもと接する業務に就くことが決まった人についてだけ確認できる仕組みだからです。本人が承諾していても、内定前の確認はできません。

そのため、「確認の結果を見てから内定を出す」という順序は取れません。内定を出し、確認を申請し、結果を受け取ってから業務に就いてもらう、という流れになります。だからこそ、内定を出す前の段階で、本人に前科の有無を書面で確かめておくことが大切になります(後述)。

前提2:交付までの標準的な期間

国のQ&Aが示す標準処理期間は次のとおりです。

区分 申請から交付までの目安
日本国籍の人 2週間から1か月程度
外国籍の人 1か月から2か月程度
確認の結果、該当があった場合 本人への事前通知のあと、訂正を求められる期間(通知から2週間)が加わる

該当がある場合は、事業者に確認書が届く前に、まず本人に通知が届きます。本人は2週間以内に訂正を求めることができ、その期間が過ぎてから事業者に交付されます。

申請の前に、本人にしてもらう手続き

申請は、国の「こまもろうシステム」で行います。事業者はGビズIDを取得して事業者アカウントを作ります(認定を受ける民間事業者は、認定を受けたあとに犯罪事実確認の手続きに進みます)。そのうえで、対象の人の氏名とメールアドレスを登録すると、本人にアカウント作成の案内が届きます。

本人は、マイナンバーカードなどで本人確認をしてアカウントを作り、戸籍の情報を提出します。戸籍の情報は、スマートフォンのマイナアプリでマイナンバーカードを読み取って提出できます。外国籍の人は在留カードや住民票、旅券の写しなどが必要です。戸籍を取り寄せる費用は本人の負担です。

本人の手続きが遅れると、申請そのものが進みません。内定通知と同時に、手続きの案内と期限を伝えておきましょう。提出したかどうかは、事業者もシステム上で確認できます。

4月1日に従事を始める人の逆算表

国のQ&Aは、標準処理期間の最長期間(日本国籍は1か月、外国籍は2か月)を確保して申請していれば、「十分な余裕をもって申請した」ものとして扱うとしています。これをもとに逆算すると、次のようになります。

時期の目安 日本国籍の人 外国籍の人
内定・本人への案内 1月下旬まで 12月下旬まで
本人のアカウント作成・戸籍などの提出 2月中旬まで 1月中旬まで
交付申請の期限 3月1日ごろまで 2月1日ごろまで
研修の受講 従事開始前まで 従事開始前まで
従事開始 4月1日 4月1日

研修は、原則としてこどもと接する業務に就く前に受講してもらう必要があります。座学と演習を組み合わせる必要があるため、入社前研修の日程に組み込んでおくと安心です。

戸籍の情報は「早すぎる」提出にも注意

マイナアプリで戸籍の情報を提出するときに使う識別符号は、発行から3か月間有効です。国のQ&Aは、発行から3か月以内にシステムへ登録されていれば、申請のときに提出済みとして扱うとしています。内定から入社まで期間が長い場合は、本人に「いつ取得し、いつまでに登録するか」を具体的な日付で伝えると、手続きのやり直しを防げます。

外国籍の人を採用するときは、さらに1か月前倒し

外国籍の人は交付までの目安が最長2か月です。過去に氏名の変更がある場合は、それを証する書類も必要になります。本人が書類をそろえる時間も見込んで、日本国籍の人より1か月以上早く動き始めましょう。

採用が年度末に集中する事業者の工夫

学習塾やスポーツクラブ、放課後児童クラブなどは、4月に向けて採用が集中しがちです。施行後は、次のような工夫が考えられます。

  • 定期採用の内定時期を、例年より1か月ほど前倒しする
  • 年度途中の欠員に備えて、すでに確認を終えた人に代わりを頼める体制をつくる
  • 契約を更新して働き続けてもらう人は、更新前に次の契約を書面で取り決めておく

最後の点について、国のQ&Aは、契約期間が終わったあとも引き続き働くことが新しい雇用契約書などで前もって取り決められている場合は「離職」に当たらず、改めて確認する必要はないとしています。更新の手続きが遅れて契約に空白ができると扱いが変わることがあるため、更新の段取りも見直しておきましょう。

間に合わないときの「いとま特例」は例外

急な欠員などのやむを得ない事情があり、すぐに業務に就いてもらわないと事業の運営に大きな支障が出る場合に限り、業務に就いた日から3か月以内(一定の場合は6か月以内)に確認を行う「いとま特例」があります。国のQ&Aが示す主な事情は次のとおりです。

  • 急な増員や予見できない欠員
  • 労働者派遣契約などの締結の遅れ
  • 合併などの組織変更
  • 十分な余裕をもって申請したのに、従事開始までに交付されない場合

「採用活動が遅れた」「いつもこの時期に内定を出している」といった理由は当たりません。特例を使う場合も、確認が終わるまでは原則としてこどもと一対一にさせない、研修を受けさせる、管理職が定期的に見回るといった措置がすべて必要です。対象になる本人には、特例の対象であることと守るべきことを、あらかじめ書面で説明します。

逆算表どおりに申請したのに交付が間に合わない場合は、国のQ&Aによると、申請時に登録した従事開始予定日より前に、こども家庭庁から特例が適用される旨のお知らせが届きます。事業者側で特別な手続きは必要ありませんが、上の措置をとったうえで働いてもらうか、確認が終わるまでこどもと接しない業務に就いてもらうかを決めておきましょう。どちらにするかを採用時に本人へ伝えておくと、当日になって慌てずに済みます。

2026年中に内定を出した人は「現職者」として扱われる

注意したいのが、施行前後に内定を出した人の扱いです。

  • 学校や認可保育所など(義務対象):2026年12月24日以前に内定を出し、こどもと接する業務に就くことが決まっていた人は「施行時現職者」です。施行から3年以内(2029年12月24日まで)に、割り当てられた時期に確認します
  • 認定を受ける民間事業者:認定を受けた日の前日までに内定を出していた人は「認定時現職者」です。認定の日から1年以内に確認します

つまり、2027年4月入社の新卒に2026年秋に内定を出した場合、その人は入社前に確認を終えるとは限りません。採用の時点で前科の有無を書面で確かめていたかどうかが、あとで前科が分かったときの対応を大きく左右します。採用書類の整え方は「日本版DBS 解雇の注意点」、認定の有無による違いは「認定の有無で変わる、性犯罪歴のある求職者への対応」で解説しています。

採用書類に入れておきたい3つのこと

国のQ&Aは、内定取消しが必要になる場合に備えて、採用の過程で次の対応をしておくことが適当だとしています。

  1. 募集要項の採用条件に、特定性犯罪の前科がないことを書く
  2. 履歴書の提出時など内定前に、誓約書などで前科の有無をはっきり確認する
  3. 内定通知書に、内定取消しの理由として「重要な経歴の詐称」を書いておく

あわせて、内定後に犯罪事実確認があること、本人に戸籍の提出が必要なこと、確認の結果によってはこどもと接する業務に就けないことも、書面で伝えておきましょう。

よくある質問

本人が同意していれば、内定前に確認してもよいですか?

できません。国のQ&Aは、本人の承諾があっても、こどもと接する業務に就くことが決まっていなければ確認はできないとしています。内定前は、誓約書などによる本人の申告で確かめることになります。

内定を辞退された場合、申請はどうなりますか?

交付前に内定辞退や退職があった場合は、事業者がシステム上で申請の取下げ手続きをします。

短期のアルバイトやスポットワークの人も、従事前に確認が必要ですか?

必要です。従事期間による例外はありません。一定の期間内(最長6か月)に再び働く可能性がある旨の書面を取り交わしておけば、その期間内は確認の記録を持っておけるため、次に働いてもらうときに改めて確認する必要はなくなります。

日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・行政書士の立場から、採用スケジュールの組み直しや募集要項・誓約書・内定通知書の整備をサポートしています。

採用書類のうち、雇用契約書と労働条件通知書の違いと作成の依頼先は「雇用契約書と労働条件通知書の違い|行政書士と社労士の役割分担」で解説しています。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。

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