スポーツクラブ・水泳教室のこども性暴力防止法対応|身体接触・更衣・送迎のルールの作り方

スポーツクラブ・水泳教室のこども性暴力防止法対応|身体接触・更衣・送迎のルールの作り方

「フォームを直すために体に触れるのは、もうやめたほうがいいのでしょうか」。スポーツクラブや水泳教室、ダンス・バレエ教室の指導者から寄せられる不安です。結論からお伝えすると、こども性暴力防止法(日本版DBS)は指導のための身体接触を一律に禁じてはいません。国のガイドラインは、スポーツ、水泳、バレエ、ダンスなどでは、こどもと保護者の理解を得た範囲で、身体接触を伴う指導があり得るとしています。大切なのは、その範囲を事前に決めて共有しておくことです。この記事では、認定の対象になる条件と、現場のルールの作り方を整理します。

スポーツ教室が認定の対象になる条件

学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者は、2026年12月25日の施行後、国の認定を受けるかどうかを自分で選べます。スポーツ教室が「民間教育事業」として認定を受けるには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

要件 内容
こどもに教える事業 こどもに技芸や知識を教えることを目的とし、実際に教えている(大人と一緒のクラスも可)
修業期間が6か月以上 6か月以上にわたって事業を行い、同じこどもが複数回参加できる
対面の指導 オンラインだけの指導は対象外
事業者が用意した場所 自社の施設、公民館、プール、公園など(こどもの自宅は除く)
教える人が3人以上 雇用の形は問わず、ボランティアのコーチや派遣の指導者も数える

認定を受けると、コーチや指導者は職種全体が犯罪事実確認と研修の対象になります。受付や運営スタッフは、業務の実態によって対象になるかどうかが分かれます。要件の詳しい考え方は「認定対象になる「5つの要件」」で解説しています。

スポーツの現場で起きやすい「不適切な行為」

ガイドラインは、それ自体は性暴力に当たらなくても、続いたり進んだりすると性暴力につながり得る行為を「不適切な行為」と呼び、具体例を挙げています。スポーツの現場に関係が深いものを整理すると、次のとおりです。

場面 ガイドラインの具体例(要点)
連絡 こどもと私的な連絡先(SNS、オンラインゲームのアカウントなど)を交換し、私的にやり取りする
送迎 必要がないのに、こどもを一人だけ車に乗せて送迎する
撮影 私物のスマートフォンや、ルール外の方法でこどもを撮影・保存する
合宿・遠征 更衣や宿泊を伴う活動で、必要がないのに大人とこどもが二人きりで更衣室や風呂を使う
身体接触 業務に必要がないのにマッサージをする、またはさせる
更衣 必要がないのに、更衣室やこどもが着替えている部屋に入る
特別扱い 特定のこどもにだけ高価な物を与える、容姿を過度にほめる

ただし、ガイドラインは、これらは一律に不適切と判断されるものではなく、事業の内容やこどもの年齢、現場の状況で変わると明記しています。だからこそ、各事業者が自分たちの指導に合わせて範囲を決めることが求められています。

身体接触のルールづくり:ガイドラインが示す工夫

ガイドラインは、身体接触を伴う指導が必要な場合の工夫として、次のような方法を挙げています。

  1. 事前に範囲を説明して共通認識をつくる:こどもと保護者に、事業者内で「不適切な行為」として決めている範囲を、入会時などにあらかじめ説明しておく
  2. 書面で合意しておく:個別の契約書などで、身体接触の有無と範囲について合意しておく
  3. その都度声をかける:年齢の高いこどもに触れる必要があるときは、「ここ触るよ」とその都度伝える
  4. 緊急時の一対一は共有する:けがなどで急に一対一の送迎が必要になったときは、その経過を事前・事後に組織内で共有するルールにしておく

たとえば水泳なら「ビート板の補助」「手足の動きの補助」のように、どの場面で、体のどの部分に、どのように触れるかを具体的に書き出すと、説明もしやすくなります。年齢の低いクラスと中高生のクラスで基準を分けることも大切です。ガイドラインも、未就学児と中高生を同じように扱うことはできないとしています。

入会時の説明資料には、たとえば次のような書き方が考えられます。

当教室では、泳ぎ方の指導や安全の確保のために、コーチがお子さまの腕・脚・背中に触れて補助することがあります。補助はプールサイドから見える場所で行い、補助の前には声をかけます。更衣室にコーチが一人で入ることはありません。気になる点があれば、受付または下記の相談窓口までお知らせください。

このように「なぜ触れるのか」「どこで、どのように」「困ったときの相談先」をそろえて書くと、保護者の安心につながります。

合宿・遠征・送迎・SNSのルール

合宿・遠征

更衣や入浴、宿泊の場面は、大人とこどもが二人きりにならない部屋割りや時間割にしておきます。合宿のときだけ来てもらう外部のコーチも、年に何度か来てもらうなら継続性を満たし得るとされ、対象になる可能性があります。

送迎

日常の送迎は、職員を2人以上にするか、こどもを複数人同時に乗せる経路にするなど、一人のこどもと長く二人きりにならない方法を検討します。災害や事故などの緊急時は例外になり得ますが、その場合も記録と共有を欠かさないようにします。

SNS・連絡ツール

業務の連絡にSNSを使う場合、国のQ&Aは、できる限り一対一にせず、保護者やほかの職員もグループに入れるなどの工夫を示しています。こどもから個人的な悩みが届いたときは、上司に報告する、私物の端末でやり取りしないといった対応を決めておきます。

撮影

大会や練習の写真・動画は、保護者への報告や指導に役立つ一方で、トラブルになりやすい場面です。撮影してよい人、使ってよい端末(教室の端末に限るなど)、保存場所、公開してよい範囲を決めておきます。指導者の私物のスマートフォンに、こどもの写真が残る状態は避けましょう。

防犯カメラ

更衣室以外の練習場所や通路に防犯カメラを置くことも、見守りの方法の一つです。ガイドラインは、設置や運用にあたっては、プライバシー、こどもへの心理的な影響、指導の萎縮、目的外利用の禁止といった点に配慮し、関係者で丁寧に話し合って運用ルールに合意しておくことが重要だとしています。国のQ&Aは、この合意は保護者一人ひとりから文書をもらうことまで求める趣旨ではないとしています。

ルールの決め方と伝え方

ガイドラインは、「不適切な行為」を定めるときは、現場の指導者とよく話し合い、指導者が過度に萎縮しないよう注意するよう求めています。経営者だけで決めると、現場で守れないルールになりがちです。次の手順で進めるとスムーズです。

  1. 指導の場面ごとに、必要な身体接触と、避けたい行為を書き出す
  2. こどもの年齢層ごとに基準を分ける
  3. 決めた内容を服務規律や規程に反映する
  4. 入会時の説明資料や同意書で、こどもと保護者に伝える
  5. 研修の演習で、具体的な場面を使って確認する

初めてで比較的軽い「不適切な行為」があったときは、いきなり重い処分にするのではなく、理由を聞いたうえで指導し、その後の様子を注意深く見るといった段階的な対応が考えられるとされています。ルールの決め方全体は「不適切な行為のルールづくり」もあわせてご覧ください。

よくある質問

保護者が見学できる教室なら、閉鎖性はないと考えてよいですか?

見学がない時間帯や、更衣室、送迎、SNSでのやり取りなど、第三者の目が届かない場面があれば閉鎖性はあり得ます。指導の時間だけで判断しないようにしましょう。

保護者がボランティアでコーチを手伝っています。対象になりますか?

関わり方によります。ガイドラインは、地域のスポーツクラブの練習に夏休みの1日だけ来て指導するOBの大学生は対象外としています。一方、定期的に練習に入り、こどもと一対一になる場面がある人は、ボランティアであっても対象になり得ます。くわしくは「ボランティアに対しての注意点」をご覧ください。

認定を受けない教室は、何もしなくてよいですか?

認定を受けるかどうかは任意です。ただし国のQ&Aは、認定を受けない場合も、研修教材を活用したり、早期把握や相談の体制を整えたりして、こどもへの性暴力の防止に努めるよう求めています。この記事で紹介した身体接触や送迎のルールは、認定がなくてもすぐに始められます。

学校の水泳授業の指導を受託しています。確認はどちらが行いますか?

国のQ&Aは、学校の事業として行う場合は、指導者が外部の受託者であっても、学校の側で犯罪事実確認を行うとしています。学校の施設を借りて別の事業として教室を開く場合は、認定を受けた運営事業者が確認を行います。

日本版DBS認定運用サポートでは、スポーツ教室の指導内容に合わせた「不適切な行為」の範囲づくり、規程や同意書の作成、指導者向け研修の設計をサポートしています。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。

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