こども性暴力防止法対応で残業が増えたら|36協定と健康相談窓口

こども性暴力防止法対応で残業が増えたら|36協定と健康相談窓口

こども性暴力防止法(日本版DBS)の準備では、研修や規程づくり、職員への説明など、ふだんの仕事に上乗せされる作業が続きます。担当者や管理職の残業が増える事業所も出てくるはずです。結論からお伝えすると、残業が増える見込みがあるなら、まず36協定の中身を確かめ、特別条項を使うなら「健康福祉確保措置」を実際に行い、記録を残すことが大切です。2026年9月から、労働基準監督署はこの措置の実施状況を重点的に確認する方針に変わりました。この記事では、準備で増える仕事、36協定の上限、9つの健康福祉確保措置、そして「心とからだの健康問題についての相談窓口」(この記事では「こころと体の健康相談窓口」と呼びます)の整え方を解説します。

こども性暴力防止法の準備で、仕事の時間が増える場面

認定を受ける事業者は、犯罪事実確認だけでなく、日ごろの安全確保の取り組みも求められます。主な取り組みと、増えやすい仕事は次のとおりです。

取り組み 増えやすい仕事
研修 こどもと接する職員の受講、欠席した人への補講、受講記録の管理
犯罪事実確認 現職者への説明と手続き(認定事業者の現職者は認定から1年以内)、記録の管理
早期把握のための面談など こどもとの面談やアンケートの実施と記録
相談体制・疑いが生じたときの対応 相談の受付、聞き取り、関係者の会議、保護者への説明
規程・書式の整備 規程の作成、社内会議、職員への周知

とくに気をつけたいのが研修の時間です。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、参加が業務上義務づけられている研修の受講時間を労働時間として扱うとしています。営業時間が終わったあとに研修を入れれば、その時間は残業になります。研修の時間の確保に悩んでいる場合は「日本版DBSの研修を受ける時間がないときは?」もあわせてご覧ください。

残業が増えるなら、まず36協定を確認する

法定労働時間を超えて働いてもらったり、法定休日に働いてもらったりするには、労使で36協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります(労働基準法第36条第1項)。協定を結んでいても、延ばせる時間には上限があります。

区分 上限
原則(限度時間) 1か月45時間・1年360時間
特別条項を結んだ場合 時間外労働は1年720時間以内。時間外労働と休日労働の合計は1か月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内。1か月45時間を超えられるのは1年に6か月まで

特別条項を結ぶときは、限度時間を超えて働く人の健康と福祉を守るための措置(健康福祉確保措置)を協定で定めます(労働基準法施行規則第17条第1項第5号)。そのうえで、措置の実施状況の記録を、協定の有効期間中とその後3年間保存する必要があります(同規則第17条第2項・附則第71条)。

2026年9月から、監督で見られる点が変わった

厚生労働省は2026年8月19日、時間外労働に関する相談・支援と監督指導の見直しを発表し、9月1日から実施しています。これまでの、時間外・休日労働の時間数だけを見て「1か月45時間以内」への削減を求める一律の指導を見直し、各事業場が36協定で定めた健康福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する方針です。過重労働で健康を損なうおそれが高い場合は、引き続き指導が行われます。

つまり、これからは「協定に書いた措置を、実際に行っているか」が問われます。協定に書いただけで何もしていない、記録もない、という状態では、実施していることを説明できません。

健康福祉確保措置の9つの選択肢

36協定の指針(平成30年厚生労働省告示第323号)第8条は、次の中から協定することが「望ましい」としています。

号 措置の内容
1 労働時間が一定時間を超えた人に、医師による面接指導を行う
2 深夜(午後10時〜午前5時)に働かせる回数を、1か月に一定回数以内にする
3 終業から次の始業までに、一定時間以上の休息時間を確保する
4 勤務状況や健康状態に応じて、代償休日や特別な休暇を与える
5 勤務状況や健康状態に応じて、健康診断を行う
6 年次有給休暇を、まとまった日数の連続取得も含めて取りやすくする
7 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置する
8 勤務状況や健康状態に配慮し、必要な場合は適切な部署に配置転換する
9 必要に応じて産業医等の助言・指導を受け、または本人に保健指導を受けさせる

小規模な事業所では、産業医がいない、人が少なく配置転換が難しいといった事情から、選べる措置が限られがちです。第7号の相談窓口は、社外の専門家に任せることで、職員数が少ない事業所でも整えやすい措置です。

「こころと体の健康相談窓口」を形だけにしないために

相談窓口は、置いただけでは実施したことになりにくい措置です。次の3点を整えておくと、職員が使いやすく、監督の場面でも実施状況を説明しやすくなります。

  • 周知:窓口の存在、相談の申し込み方、相談しても不利益にならないことを、職員全員に書面などで知らせる
  • 話しやすさ:上司や同僚に知られずに相談できる形にする。こども性暴力防止法への対応では、研修の負担、保護者対応の緊張、同僚の言動への不安など、職場では口にしにくい悩みも出てきます
  • 記録:周知した日、個人が特定されない形での利用件数などを残し、健康福祉確保措置の実施記録として保存する

なお、この窓口は職員の心身の健康のためのものです。こども性暴力防止法で整える「こどもが相談しやすくするための体制」とは目的が違うため、別のものとして用意します。

体の不調については、窓口は話を聞いて医療につなぐ入り口の役割です。時間外・休日労働が1か月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人には、医師による面接指導を行う必要があります(労働安全衛生法第66条の8、労働安全衛生規則第52条の2)。面接指導を行うのは医師です。

特別条項を使う月の進め方の例

認定申請の直前や研修が集中する月に、限度時間を超えそうになったときの進め方の例です。実際の手続きは、自社の36協定に書いた内容に従います。

時期 行うこと
月の初め 研修や準備の予定から、だれの残業が増えそうかを見込み、仕事の割り振りを見直す
45時間を超えそうなとき 協定で定めた手続き(労使の協議や通知など)を行い、その記録を残す
超えた月 対象の職員に相談窓口をあらためて案内し、協定で定めた措置を行う
80時間を超えたとき 疲労の状態を確かめ、医師による面接指導につなぐ
月の終わり 労働時間と措置の実施状況を記録し、次の月の予定に生かす

記録は、あとから見て「いつ、だれに、何をしたか」が分かる形にしておきます。出勤簿や研修の受講記録と並べて保管すると、管理しやすくなります。

日本版DBS認定運用サポートが対応できること

日本版DBS認定運用サポートの責任者は、社会保険労務士・行政書士・公認心理師の資格をもっています。36協定の整備と、社外の相談窓口の両方を、同じ窓口でご相談いただけます。

資格 対応できること
社会保険労務士 36協定(特別条項を含む)の作成と届出、健康福祉確保措置の選び方、実施記録の様式づくり、研修時間の扱いを含む就業規則の見直し
公認心理師 社外の「こころと体の健康相談窓口」として、オンラインなどで職員の相談に応じる。必要に応じて医療機関や公的な相談窓口を案内する。事業者には、個人が特定されない形で利用の傾向を報告する

相談の内容は、原則として本人の同意なく事業者に伝えません。ただし、命や体に差し迫った危険がある場合は、安全を優先して必要最小限の連携を行います。また、公認心理師は診断や治療は行いません。相談する人に主治の医師がいる場合は、その医師の指示を受けて支援します(公認心理師法第42条第2項)。

相談窓口のサービス内容は「社外キャリア・メンタル相談」で詳しくご案内しています。ご相談はお問い合わせフォームから、「お問い合わせ種別」で「その他」を選び、本文に「36協定・相談窓口」とお書きください。

よくある質問

Q. 特別条項がなければ、健康福祉確保措置は必要ありませんか?

協定で定める必要があるのは、特別条項を結ぶ場合です(労働基準法施行規則第17条第1項ただし書)。ただし、準備で残業が増えて限度時間を超えそうなら、特別条項が必要かどうかを先に確かめてください。

Q. 研修を営業時間外に行うと、残業代は必要ですか?

参加が業務上義務づけられている研修は労働時間です。所定労働時間の外に行えば時間外労働となり、法定労働時間を超える部分には36協定と割増賃金が必要です。

Q. 相談窓口は社内の担当者でもよいですか?

指針は、窓口をだれが担うかまでは定めていません。社内でも設けられますが、上司や同僚に知られたくない悩みは社外のほうが話しやすい面があります。

こども性暴力防止法の準備と、職員の働き方・健康を守る取り組みは、一緒に進めると手戻りが少なくなります。日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・公認心理師の立場から、その両方をサポートしています。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。

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