
日本版DBS(こども性暴力防止法)の研修は、動画を流して終わりにしてしまうと、現場の行動につながりにくくなります。こども家庭庁の「研修の手引き」では、受講状況の把握と、研修の効果測定、その結果を次の研修や組織の改善につなげることが示されています。この記事では、手引きとこども家庭庁の研修教材をもとに、研修の効果測定の進め方を整理します。
効果測定の前に:受講状況を一人ずつ把握する
対象となる従事者全員に研修を受講させることは、事業者の義務です。効果を測る前に、まず「全員が受講したか」を確実に把握する必要があります。手引きでは、出欠(受講の有無)の確認や受講者アンケートなどで、個人ごとの受講状況を把握し、受講していない人がいれば受講を促すことが求められています。
業界団体などが行う外部の研修を受講させた場合でも、対象従事者が受講したことを事業者が確認しなければなりません。認定を受ける事業者は、認定の申請時に、研修の受講を証する書類(年間研修計画書や事業者内の研修のお知らせなど)を提出する必要もあります。
こども家庭庁は、記録に使える様式例として、次のExcel様式を公表しています(使用は任意です)。
- 年間研修計画(従事者向け・事業者向け):研修方法、研修名、実施方法、実施主体、実施場所、対象人数、実施時期、フォローアップの方法・場面・頻度
- 研修受講管理表:研修の区分(法定・任意など)、受講形式(標準・要点・独自など)、職員番号、氏名、職位・職種、従事開始日、受講方法、受講完了日
特に「従事開始日」と「受講完了日」を並べて記録しておくと、業務に従事する前に受講を終えているかを一目で確認できます。
研修の種類ごとに分けて記録する
研修受講管理表に「研修区分」の欄があるのは、法にもとづく研修が従事者全員向けのものだけではないからです。手引きでは、全員向けの研修のほかに、次のような研修が整理されています。
- いとま特例が適用される従事者の研修:やむを得ない事情で犯罪事実確認の前に従事を始める人に、いとま特例の趣旨や必要な措置、性暴力の防止について学ばせる研修
- 初回かつ比較的軽微な「不適切な行為」をした人が受ける研修
- 犯罪事実確認記録等を取り扱う人の研修:人的情報管理措置として、記録の適正な取扱いを徹底するための研修
これらを全員向けの研修と同じ表に混ぜてしまうと、誰がどの研修を終えたのかがわからなくなります。区分ごとに記録し、それぞれの受講完了日を確認できるようにしておきましょう。
効果測定1:確認テストで知識の定着を確かめる
こども家庭庁の従事者向け研修教材には、知識の定着を確認するための確認テスト(Excel形式)が用意されています。手引きでも、研修後にこの確認テストを活用することが考えられるとされています。オンラインの集合研修では、受講者の主体性を引き出す工夫の一つとしても、確認テストの実施が挙げられています。
確認テストは、点数で人を評価するためのものではなく、どの項目の理解が浅いかを見つけるための道具として使うのがポイントです。たとえば、正答率が低かった問題を集計し、次の朝礼やミーティングで取り上げると、全体の理解の底上げにつながります。
効果測定2:受講者アンケートで研修そのものを評価する
手引きは、研修の実施後に理解度テストや受講者アンケートを行い、研修の効果を測定・評価することを挙げています。そのうえで、評価の結果から研修の実施方法や内容の改善点を把握し、次の研修に反映させることが求められています。
アンケートでは、次のような点を聞いておくと、改善に使いやすくなります。
- 自分の職場で「不適切な行為」に当たる行動がイメージできたか
- 疑いに気づいたとき、誰に、どのように報告すればよいかわかったか
- 判断に迷う場面や、ルールがあいまいだと感じた点はどこか
- 研修の時間や方法(動画、演習、オンライン)は適切だったか
効果測定3:研修での気づきを組織の改善につなげる
手引きは、研修で議論した内容を、事業者のルール、体制、環境の見直しにつなげることが望ましいとしています。例として、次のような取組が示されています。
- グループワークで「この場面の対応に迷う」という声が出たら、対応を話し合い、合意できた内容を事業所内のガイドラインやマニュアルの改訂に反映する
- 研修で「死角」のリスクを学んだ後に、実際に施設内を点検して環境を改善する
- 「自分たちの事業所ではどうするか」という議論を集約し、組織のルール・体制・環境の整備に生かす
テストの点数だけでなく、研修をきっかけにルールや環境がどれだけ変わったかも、研修の効果として記録しておくとよいでしょう。「不適切な行為」の範囲の見直しについては「日本版DBSの「不適切な行為」とは?」で解説しています。
測定するときの注意点:心理的安全性を守る
手引きは、演習の効果を高めるためには心理的安全性を確保することが重要だとしています。演習の冒頭で「ここは評価の場ではない」「発言内容で不利益は生じない」と明確に伝えることなどが例示されています。
効果測定の結果を人事評価に直結させると、職員は本音を言わなくなり、判断に迷う事例も出てこなくなります。テストやアンケートは、研修と組織を改善するための情報として扱い、個人の評価とは切り分けておくことが大切です。
定期的な研修で効果を積み上げる
研修は、定期的に受講させたり、日常的な取組の中に組み込んだりすることが望ましいとされています。1回目の確認テストやアンケートの結果を記録しておけば、2回目以降の研修でどの項目を重点的に扱うかを決められます。年間研修計画にフォローアップの方法と頻度を書き込み、測定、改善、再実施のサイクルを回していきましょう。
研修の受講対象者の範囲は「日本版DBSの標準研修は誰が受ける?」、全員が集まる時間がとれない場合の進め方は「日本版DBSの研修を受ける時間がないときは?」で解説しています。
まとめ
日本版DBSの研修の効果測定は、①受講状況の把握と記録、②確認テストによる知識の確認、③アンケートによる研修の評価、④気づきを組織のルールや環境の改善につなげること、の4つで考えると整理しやすくなります。受講させた記録を残すことは、認定申請や施行後の運用でも欠かせません。
日本版DBS認定運用サポートでは、社会保険労務士・行政書士・公認心理師の立場から、研修計画と受講管理の仕組みづくり、アンケートの設計、結果を踏まえた規程の見直しまでをご支援しています。
研修の設計・実施のご依頼は「従業員向け社内研修」のページをご覧ください。
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※本記事は、2026年9月28日時点で公表されているこども家庭庁の資料にもとづいています。最新の内容は、こども家庭庁の公式ページで必ずご確認ください。
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