認定後の運用を支える日本版DBSの社内規程 研修・相談・配置転換・懲戒・採用

認定後の運用を支える日本版DBSの社内規程 研修・相談・配置転換・懲戒・採用

日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定を受けたあとは、認定基準に沿った取組みを日々続けていくことが求められます。研修の実施、相談への対応、万一の際の配置転換や懲戒など、実際の運用を支えるのが「運用のための規程」です。この記事では、認定後に整えておきたい規程と、それぞれのポイントを解説します。

教育研修規程:受講漏れを防ぐ

認定事業者は、こどもと接する業務に従事する人に研修を受講させることが求められます。教育研修規程では、誰が、いつ、どのような内容の研修を受け、どう記録するかを定めます。小・中規模の事業所では、まず受講を働きかけることと、受講漏れを防ぐことを重視しましょう。会社の指示で受講する時間は労働時間として扱う点にも注意が必要です。研修には、制度の基礎知識に加えて、「不適切な行為」の範囲、相談や報告の流れ、こどもへの対応などを含め、座学だけでなく事例を使った演習を取り入れると、現場で生かしやすくなります。

受講状況の記録や、確認テスト・アンケートを使った研修の効果測定の進め方は「日本版DBS研修の効果測定」で解説しています。

相談・苦情・内部通報対応規程:声を上げやすくする

こどもや保護者、スタッフが不安や違和感を相談できる窓口を設け、その存在を分かりやすく周知します。相談したことを理由に不利益な扱いをしないこと、相談内容を必要な範囲の人だけで共有することを規程で明確にしておくと、早い段階で声が上がりやすくなります。担当者が相談者と上下関係や家族関係にあると相談しにくくなるため、外部の相談窓口を含め、複数の相談先を用意することも大切です。

周知の方法は、相手に合わせて工夫します。こども向けには年齢に応じた言葉で「困ったときに誰に、どうやって相談できるか」を伝え、保護者向けには案内文や入会時の資料で相談先を示します。スタッフには、研修や服務規程の周知とあわせて、報告と相談の流れを確認してもらいます。

配置転換規程:こどもと接しない業務への変更に備える

性暴力のおそれがあると判断された場合などには、そのスタッフをこどもと接しない業務に移すことが考えられます。配置転換は労働条件の大きな変更になるため、就業規則などに根拠を定め、手続きを明確にしておく必要があります。職種や勤務地を限定して雇用している場合は、その範囲を超える配置転換に本人の同意が必要になることがある点にも注意しましょう。

小規模な事業所では、移せる業務が限られることも少なくありません。教材作成や経理など、こどもと接しない業務をあらかじめ洗い出しておくと、いざというときの選択肢になります。

懲戒規程:処分は就業規則の定めが前提

懲戒処分を行うには、どのような行為がどの処分の対象になるかを就業規則などで定め、スタッフに周知しておくことが前提です。定めがなかったり、処分が行為に比べて重すぎたりすると、処分が無効と判断されるおそれがあります。本人に弁明の機会を与えることも重要です。なお、こどもの安全を守るための配置転換などの措置と、制裁としての懲戒処分は、目的の異なる別の手続きとして区別して考えます。

採用規程:採用の段階から確認を

採用の段階で、特定の性犯罪の前科がないことを採用条件として明示し、誓約書などで確認しておくと、後に事実が判明した場合の対応の根拠になります。募集要項、誓約書、内定通知書の内容をそろえておくことがポイントです。

内定の段階で犯罪事実確認を行う場合に備えて、内定を取り消す事由をあらかじめ内定通知書に明記しておくことも重要です。取消しの理由や手続きが不明確だと、トラブルにつながるおそれがあります。

記録を残すことが運用の証明になる

研修の受講記録、相談の受付記録、事情確認の記録、措置の検討経過などは、それぞれの規程で「何を、誰が、どこに記録するか」を決めておきます。認定後は定期的な報告が求められるほか、行政による確認の対象にもなります。記録があれば、事業所が適切に対応してきたことを説明できます。一方、犯罪事実確認に関する情報は情報管理規程に沿って取り扱いを限定し、必要のない人の目に触れないようにします。

雇用関係にない人へのルール

役員、業務委託の講師、ボランティア、インターンなど、雇用関係にない人には就業規則が適用されません。業務委託契約の特約、誓約書、活動規約などを使って、雇用しているスタッフと同じ水準のルールを守ってもらう仕組みを整えましょう。役員が当事者になった場合の扱いは「役員に不適切な行為や犯罪事実があった場合」で説明しています。

まとめ

認定は取得後も、日々の運用を続けて初めて意味を持ちます。研修、相談、配置転換、懲戒、採用、そして雇用関係にない人への対応まで、規程で手順をあらかじめ決めておくことが、こどもを守り、同時にスタッフを守ることにもつながります。

規程を作ったあとに点検したい5つの項目

規程は、作ったときが完成ではありません。実際の運用とずれていないかを確かめ、必要に応じて直していくことで、はじめて現場を支える規程になります。作成後の点検では、次の5つを確認してみてください。

  • 運用との一致:規程に書いてあるとおりに、現場が動いているか。書いてあるのに実行できていないことがないか。
  • 規程どうしの整合:就業規則、情報管理規程、対処規程などの間で、言葉の意味や手順が食い違っていないか。
  • 担当者の引継ぎ:担当者が交代しても、手順が引き継がれる仕組みがあるか。
  • 記録の様式:研修の受講、相談の受付、配置転換などの記録を、残すための様式が用意されているか。
  • 周知の記録:従事者に規程を知らせたことを、あとから確かめられるか。

見直しの機会をあらかじめ決めておく

見直しは、気づいたときにやろうとすると後回しになりがちです。年に一度は点検する時期を決めておく、法令やこども家庭庁の案内が更新されたときに確認する、制度の運用で困ったことがあったときに見直す、といったきっかけをあらかじめ決めておくと続けやすくなります。

見直したときは、変更した日と理由を残しておきます。あとから「なぜこの定めにしたのか」がわかれば、担当者が代わっても説明できます。就業規則にかかわる変更は、届出や従業員への周知が必要になる場合があるため、社会保険労務士に確認しながら進めると安心です。

運用の記録が、体制を整えている証明になる

規程どおりに運用していることは、記録があってはじめて示せます。研修を受けた日、相談を受け付けた日、対応した内容などを、決めた様式で残しておくと、保護者や関係機関に説明するときの根拠になります。ただし、記録には個人情報が含まれるため、保管場所と閲覧できる人を限定してください。

小さな事業所での規程の考え方

規程は数が多いほど良いというものではありません。人数が少ない事業所では、一つの規程にまとめたり、既存の規程に必要な条文を加えたりする方法もあります。大切なのは、子どもに接する人が、何をすべきか、迷ったときにだれに相談すればよいかを、すぐに確かめられることです。分量よりも、現場で使えるかどうかを基準に考えてください。

また、規程の内容を従事者が理解していなければ、運用は続きません。研修の場で規程の要点を説明する、よくある場面を例にして話し合うなど、規程を「読むもの」から「使うもの」に変える工夫をしてみてください。

まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順番を確認できます。

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