
こども性暴力防止法(日本版DBS)の準備で、情報管理規程や児童対象性暴力等対処規程の作成を外部に頼もうと考えている事業者の方は多いと思います。結論からお伝えすると、こども家庭庁が2026年11月5日に改訂したQ&A(応用編10-3-2)では、これらの規程や認定申請書類の作成を外部に頼めるのは、行政書士・行政書士法人・弁護士・弁護士法人だけとされています。この記事では、Q&Aの内容と根拠、頼める相手・頼めない相手、依頼する前に確かめたいことを整理します。
11月5日のQ&A改訂で追加された「10-3-2」
こども家庭庁は2026年11月5日、こども性暴力防止法に関するQ&Aを改訂し、新しい項目を追加しました。そのひとつが応用編の10-3-2です。
| 質問 | 情報管理規程や児童対象性暴力等対処規程等の作成を他の事業者に委託する際に留意することはありますか。 |
|---|---|
| 答えの要点 | 規程や認定申請書とその添付書類等の作成は、行政書士法の「官公署に提出する書類」の「作成」に当たると解される。そのため、作成を委託する場合、行政書士・行政書士法人・弁護士・弁護士法人以外の者には委託できない |
これまで「規程づくりはコンサルティング会社に頼む」「申請の準備はシステム会社のサポートに任せる」と考えていた事業者は、依頼先を見直す必要があります。
なぜ規程の作成が「官公署に提出する書類」になるのか
理由は、これらの規程が国に提出する書類だからです。「官公署」とは国や地方公共団体の役所のことで、こども性暴力防止法では、こども家庭庁が提出先になります。Q&Aは次のように整理しています。
| 事業者 | 提出する書類 | Q&Aが示す根拠 |
|---|---|---|
| 認定を受ける事業者(学習塾・スポーツクラブなど) | 認定申請書に、情報管理規程と児童対象性暴力等対処規程を添付する | 法第19条第4項第3号・第5号、施行規則第18条第3項第3号 |
| 義務対象の事業者(国や地方公共団体などを除く) | 情報管理規程を作成し、こども家庭庁に提出する | 法第11条、施行規則第12条第1項・第2項・第4項 |
行政書士法第1条の3は、他人の依頼を受け報酬を得て「官公署に提出する書類」を作ることを行政書士の業務としています。そして第19条第1項は、行政書士・行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て、業としてこの業務を行うことを禁じています(弁護士・弁護士法人は、Q&Aでも除かれています)。
「いかなる名目によるかを問わず」とあるとおり、「コンサルティング料」「サポート費」などと名前を変えても、報酬を得て作成していれば同じ扱いです。認定を受ける事業者だけでなく、情報管理規程を提出する義務対象の事業者(学校法人や社会福祉法人など)にも関係する点に注意してください。
頼める相手・頼めない相手
Q&Aの内容を、依頼先ごとに整理すると次のとおりです。
| 依頼先 | 規程・認定申請書類の作成 |
|---|---|
| 行政書士・行政書士法人 | 頼める |
| 弁護士・弁護士法人 | 頼める |
| 社会保険労務士(行政書士の登録がない場合) | 頼めない(Q&Aが挙げる4者に含まれない) |
| コンサルティング会社・システム会社・研修会社など | 頼めない |
Q&Aにしたがうと、行政書士の登録がない社会保険労務士は、情報管理規程や児童対象性暴力等対処規程の作成を引き受けられないことになります。一方で、就業規則の作成・変更は社会保険労務士の業務です。こども性暴力防止法への対応では、規程と就業規則の両方を整えることが多いため、それぞれの資格者がそろっているかを確かめることが大切です。
なお、社会保険労務士の立場として考えると、対処規程は労務に関する書面であり、こども家庭庁の回答には疑義が生じます。ただ、日本版DBS認定運用サポートは法的判断をする立場ではなく、また代表者が行政書士・社会保険労務士の2つの資格者でもあることから、この点については「労務管理実務としては、一般論として行政書士よりも社労士の方が専門性が高い」とだけ述べるにとどめておきます。
なお、行政書士法第19条第1項に違反した者には、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています(同法第21条の2)。会社の従業者が業務として違反した場合は、会社にも罰金刑が科される規定があります(同法第23条の3)。
自社で規程を作る場合
第19条が禁じているのは、他人の依頼を受け報酬を得て、業として書類を作ることです。事業者が自社の規程を自分たちで作ることを制限するものではありません。こども家庭庁は、ガイドラインの別紙として、情報管理規程と児童対象性暴力等対処規程のひな型を公表しています。これをもとに自社で作ることもできます。
ただし、ひな型をそのまま使うだけでは、自社の事業や人員体制に合わないことがあります。自社で作るか、資格者に頼むかは、担当者にかけられる時間と、施行日までの期間を見て決めるとよいでしょう。
依頼する前に確かめたい3つのこと
- 作成するのはだれか:契約書や見積書で、規程や申請書類を作成するのが行政書士・弁護士本人(または法人)かを確かめる
- 資格の登録:担当者の資格名と登録番号を確かめる
- 就業規則との分担:就業規則の見直しを社会保険労務士がだれと連携して行うのか、規程との内容のずれをだれが確認するのかを確かめる
すでに資格のない事業者と契約している場合は、契約内容を見直し、規程や申請書類の作成をだれが行うのかを確かめてください。
いまの準備を見直すチェックポイント
すでに準備を始めている事業者は、次のような予定になっていないかを確かめてください。どれかに当てはまる場合は、規程や申請書類の作成をだれが行うのかを、早めに見直す必要があります。
| よくある予定 | 確かめること |
|---|---|
| 研修会社のパッケージに「規程作成」が含まれている | 規程を作成するのが行政書士・弁護士か。研修の受講と規程の作成は、分けて考える |
| システムの導入サポートで、規程や申請書類も作ってもらう | サポートの範囲が、システムの操作説明にとどまっているか |
| 顧問の社会保険労務士に、規程もまとめて頼んでいる | その社会保険労務士が行政書士の登録をしているか。登録がなければ、規程の作成は行政書士・弁護士に頼む |
| グループ会社や本部が、各施設の規程を有料で作る | 別の会社が報酬を得て作る形になっていないか。契約の形を確かめる |
施行日は2026年12月25日です。認定申請では規程を申請書に添付するため、申請の直前に依頼先を変えると、準備が間に合わなくなるおそれがあります。
資格者に頼む場合も、事業者が担うこと
規程の作成を資格者に頼んでも、規程を定めて守っていくのは事業者自身です。作成を頼む場合と自社で行う場合の分担は、次のように考えると進めやすくなります。
| 資格者(行政書士・弁護士)に頼めること | 事業者が担うこと |
|---|---|
| 規程の案と、認定申請書・添付書類の作成 | 事業の内容、職員の人数や配置、記録の管理方法などを伝える |
| 事業に合わせた規程の見直しの提案 | 規程の内容を確かめ、事業者として定める |
| 申請書類の提出の手続き | 定めた規程を職員に周知し、日々の運用で守る |
規程は、作って提出すれば終わりではありません。職員が内容を知り、実際に動ける状態にしておくことが大切です。
日本版DBS認定運用サポートの対応
日本版DBS認定運用サポートの代表者は、行政書士と社会保険労務士の両方の資格をもっています。情報管理規程・児童対象性暴力等対処規程と認定申請書類の作成は行政書士として、就業規則の見直しと、対処規程のうち労務に関わる部分の確認は社会保険労務士として、ひとつの窓口でお引き受けできます。規程と就業規則の言葉や内容がずれないよう、最初から最後まで同じ担当者が確認します。行政書士による認定申請の支援内容・料金もご覧ください。
よくある質問
Q. こども家庭庁のひな型を使って、自社で規程を作ってもよいですか?
はい。事業者が自社の規程を自分たちで作ることは、行政書士法第19条が禁じる「他人の依頼を受け報酬を得て」行う作成には当たりません。ただし、ひな型は自社の事業や人員体制に合わせて見直す必要があります。
Q. 就業規則の見直しも行政書士に頼めばよいですか?
就業規則の作成・変更は、社会保険労務士の業務です。Q&Aでは、情報管理規程や児童対象性暴力等対処規程の作成は行政書士・弁護士に頼むものとされ、就業規則は社会保険労務士と、役割が分かれます。
Q. 名目が「コンサルティング料」なら、資格のない会社に頼んでもよいですか?
いいえ。行政書士法第19条第1項は「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て作成することを禁じています。名目を変えても、資格のない者に作成を頼むことはできません。
Q. 行政書士と弁護士、どちらに頼めばよいですか?
Q&Aでは、どちらにも委託できるとされています。認定申請の書類づくりや提出の手続きとあわせて頼むのか、職員とのトラブルなど訴訟の対応も見込むのかによって選ぶとよいでしょう。日本版DBS認定運用サポートでは、訴訟などのおそれがある場合、こども性暴力防止法や労働法に詳しい弁護士と連携して対応します。
規程整備から初動対応までを10ページにまとめた無料PDFを、11月5日改訂のQ&Aに合わせて改訂しました。詳しくはお役立ち資料(無料PDF)改訂のお知らせをご覧ください。
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雇用契約書と労働条件通知書は、外部に作成を頼む先が行政書士と社労士で分かれます。詳しくは「雇用契約書と労働条件通知書の違い」をご覧ください。
まだ何も決まっていない段階でもご相談いただけます。初回のご相談は無料です。自社が対象になるかどうか、先に整える書類、着手する順序を確認できます。