こども性暴力防止法では、児童対象性暴力等の被害を受けた児童への保護・支援が事業者の重要な責務として位置づけられています。本ページでは、被害児童の心理的ケアと相談体制の整備について解説します。
被害児童の保護・支援の法的根拠
事業者は、従事者による児童対象性暴力等を受けた児童があると認める場合、当該児童を保護し支援するための措置を講じなければなりません。これは児童対象性暴力等対処規程の必須記載事項であり(法第20条第1項第4号ハ)、認定基準の一つです。
保護・支援の具体的措置
ガイドラインでは、被害児童が日常を取り戻し、落ち着いて教育・保育等を受けることができるようにすることを目的として、以下の措置を講じるよう求めています(規則第11条)。
1. 接触の回避
被害児童と、児童対象性暴力等を行ったと認める者との接触を回避するための措置を講じます。具体的には、当該従事者の配置転換、自宅待機命令等により、被害児童が安心して通える環境を確保します。
2. 支援機関情報の提供
事案の内容やその他の事情に応じて、以下のような支援機関の情報を被害児童および保護者に提供します。
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
- 児童相談所
- スクールカウンセラー
- 医療機関(心療内科、小児科等)
- 法テラス(法的支援が必要な場合)
3. 保護者への誠実な対応
被害児童の保護者からの相談に誠実に対応することが求められます。事実関係の説明、今後の対応方針の共有、子どもの状態に関する継続的な情報交換等を行います。
相談体制の整備
認定基準として、児童等が容易に相談を行える体制の整備が求められています(法第20条第1項第3号、規則第9条)。
事業者内の相談体制
- 相談員の選任または相談窓口の設置:児童が安心して相談できる担当者を配置する
- 複数の相談ルートの確保:対面、電話、文書(投書箱等)など、多様な方法で相談できるようにする
- 匿名相談の受付:名前を言わなくても相談できる仕組みを用意する
- 性別への配慮:相談しやすいよう、男女両方の相談員を配置することが望ましい
- 相談後の流れの説明:「相談したらどうなるか」を事前に児童に伝えておく
外部相談窓口の周知
事業者内の窓口に加え、以下の外部相談窓口を児童・保護者に周知する必要があります。
- 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)
- こどもの人権110番(0120-007-110)
- Curetime(チャット相談)
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)
- 警察相談専用電話(#9110)、緊急時は110番
被害児童への対応上の注意点
二次被害の防止
被害児童への対応にあたっては、以下の点に留意し、二次被害を防止することが極めて重要です。
- 子どもを責めない(「なぜ逃げなかったの」等の言葉は絶対に避ける)
- 被害の詳細を繰り返し聞き出そうとしない(記憶の汚染防止)
- 被害児童のプライバシーを厳重に守る
- 他の児童や保護者に被害の事実が不用意に伝わらないよう配慮する
調査における配慮
事実確認のための調査は、児童の人権および特性に配慮し、その名誉および尊厳を害しないよう注意して行わなければなりません。児童への聴取は最低限にとどめ、専門的な聴取が必要な場合は警察等の関係機関と連携して対応します(規則第10条)。
障害のある児童・未就学児への配慮
知的障害のある児童に対しては、イラストや写真を活用した分かりやすい説明を行います。未就学児については、日常観察を中心とし、保護者からの聴取も併用して状況を把握します。いずれの場合も、児童の発達段階や特性に応じた対応が求められます。
関連する記事と支援
このテーマの解説記事は「カウンセリング等心理援助の記事一覧」にまとめています。規程づくりや認定申請の準備をまとめて相談したい方は「日本版DBS認定申請サポート・代行」をご覧ください。
根拠資料
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」条文
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行規則」(令和8年8月5日掲載版)
- こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月2日改訂版)
- こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年9月29日改訂版)
- こども家庭庁「こども性暴力防止法」制度ページ
執筆・内容確認:田中義人(社会保険労務士・行政書士・公認心理師)
内容確認日:2026年10月13日(上記資料の最新版と照合)