日本版DBS対応:性犯罪歴確認と情報対策

日本版DBSにおける犯罪事実確認と情報管理の重要性

令和6年(2024年)に成立したこども性暴力防止法(日本版DBS法)は、教育・保育等の現場において子どもを性暴力から守るための法律です。施行日は2026年(令和8年)12月25日に定められています。学校や認可保育所などの「義務対象事業者」に加え、国の認定を受けた学習塾やスポーツクラブなどの「認定事業者」においても、従事者の犯罪事実確認と厳格な情報管理が求められます。(出典:こども家庭庁「こども性暴力防止法・ガイドライン」

犯罪事実確認の手続きは、単に従事者の前科を確認するだけでなく、極めて機微性の高い情報を組織として適正に管理する責任を伴います。本記事では、事業者が押さえるべき確認の基準と、情報セキュリティの実務上の留意点を解説します。

確認の対象となる「特定性犯罪事実該当者」の法的基準

法律で確認対象として定められている「特定性犯罪事実該当者」とは、法令に定める特定の性犯罪の前科を有し、以下の法定期間を経過していない者を指します。

  • 拘禁刑(実刑)の場合:拘禁刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から20年を経過しない者(刑の執行猶予言渡しを取り消された者を含みます)
  • 拘禁刑の全部執行猶予の場合:刑の全部の執行猶予言渡しを受け、その裁判が確定した日から10年を経過しない者(執行猶予言渡しを取り消された者を除きます)
  • 罰金刑の場合:罰金の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から10年を経過しない者

※刑法改正前の懲役刑および禁錮刑についても、現行の拘禁刑と同様に取り扱われます。また、一部の都道府県条例に定める罪についても特定性犯罪の対象に含まれます。

犯罪事実確認記録等の厳格な情報管理措置

犯罪事実確認書およびその記載事項(犯罪事実確認記録等)は、個人の権利利益に重大に関わる極めて機微性の高い個人情報です。事業者は、情報漏えいや不正利用を防ぐため、以下の情報管理措置を徹底する必要があります。

  • 取扱者の最小化とアクセス権限の制限:確認結果を取り扱う担当者を必要最小限に限定し、業務に関わりのない職員が閲覧できない体制を整えます。
  • システム外保存の最小化:確認は「こまもろうシステム」上で行うことを原則とし、紙への印刷やローカルPC・共有フォルダへの転記など、システム外部での記録保存は極力行わない運用が基本です。不要な複製を作らず、保存が必要な場合も保存先と取扱者を限定します。
  • 法第38条に基づく確実な消去・廃棄:確認記録等は漫然と長期保管せず、法第38条に定める法定期間(離職日から起算して30日を経過する日まで、など。採用しなかった場合や事業終了時には別の起算日があります)に基づき、確実に消去・廃棄します。
  • 私用端末の利用禁止とセキュリティ設定:確認業務には必ず事業用の管理端末を使用し、私用端末の利用は禁止します。多要素認証やアクセス制御など必要な技術的安全管理を講じます。

子どもの画像データと確認記録の明確な分離管理

日常の教育・保育業務の中で記録・保管される「子どもの写真や動画データ」と、法に基づく「犯罪事実確認記録等」は、目的や法的根拠、管理手順が全く異なる情報です。これらが混同されて保管・管理されることのないよう、それぞれの保存場所とアクセス権限を適切に設定してください。

なお、子どもと接する現場における不適切な撮影や私用スマートフォンへの画像保存を制限する服務規律の徹底も、未然防止の観点から重要となります。

法律上の罰則と認定制度における取り扱い

こども性暴力防止法では、情報の適正な管理を担保するため、すでに法的な罰則が定められています。犯罪事実確認記録等について、自己または第三者の不正な利益を図る目的で提供した場合は「2年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金または併科」(法第43条)、正当な理由なく秘密を漏らした場合は「1年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金または併科」(法第45条第2項)が科されます。また、法定の廃棄義務に違反した場合にも50万円以下の罰金が定められています(法第46条)。

なお、確認手続きの実施義務違反については、直ちに直罰としての刑罰が科される仕組みではなく、国による指導・助言、報告徴収、是正命令などの行政的手続きを経て対応される構造となっています。民間教育保育等事業者においては、情報管理規程の策定や管理責任者の設置といった適正な管理体制が確保されていることが、認定を受けるための必須基準となります。

まとめ

こども性暴力防止法への対応は、子どもたちの安全を確保すると同時に、従事者の人権や極めて重要な個人情報を守る取り組みでもあります。施行日(2026年12月25日)に向け、義務対象事業者・認定取得を目指す事業者の双方が、法律の基準に即した適正な情報管理体制を整えておくことが大切です。

※本記事の内容は、令和8年3月26日時点におけるこども性暴力防止法施行ガイドラインおよび横断指針の公表資料に基づいています。

TOP