
こども性暴力防止法では、事業者に対して児童対象性暴力等の早期把握のための措置を義務付けています。性暴力被害は児童自ら訴えることが難しいケースが多く、事業者側の能動的な取り組みが不可欠です。本記事では、法第5条および第20条に基づき、事業者が講じるべき3つの措置を解説します。
早期把握が求められる背景と法的根拠
なぜ早期把握措置が必要なのか
児童対象性暴力等が行われた場合、児童から被害を訴えることが難しいケースが多いとされています。普段と異なる児童の心身や行動の変化に従事者が気づくことにより、被害の事実が判明することがあります。
そのため、こども性暴力防止法では、対象事業者に対して早期把握のための3つの措置を法的義務として課しています(規則第8条)。
法が求める3つの措置の全体像
事業者が講じなければならない措置は以下の3つです。
- 児童等に対する日常観察
- 発達段階や特性に応じた定期的な面談やアンケート
- 適切な報告と対応ルールの策定および周知
措置1:児童等に対する日常観察のポイント
観察時に意識すべき5つの留意点
ガイドラインでは、日常観察を実施するにあたって以下の点に留意することが重要とされています。
- 児童の心身や行動に変化がないか日常的に観察する
- 可能な限り複数名で観察する(担任が加害者である可能性も考慮)
- 変化や違和感を覚えた場合は積極的に声掛けを行う
- すぐに被害が開示されないこともあるため、声掛けを継続する
- 従事者間で気づきや違和感を共有しやすい環境をつくる
措置2:定期的な面談とアンケートの実施方法
発達段階に応じた実施の工夫
面談やアンケートの実施方法は、児童の発達段階や特性を踏まえて検討する必要があります。
- 未就学児:アンケートは困難なため、日常の観察と会話による早期発見が中心
- 小学生:面談やアンケートに先立ち質問項目の説明を行うことが有効
- 障害児:点字やイラストの活用など、障害の種類や程度に応じた表現と方法を工夫
回答しやすくするための工夫
アンケートを実施する際には、以下のような工夫が望ましいとされています。
- 既存のアンケートに性暴力等に関連する設問を数問程度追加する
- ウェブアンケートやアプリ等のデジタル技術も活用する
- 記名や無記名にかかわらず、回答者の心理的安全を確保する
- チェックのみで良い様式とし、周囲から記入内容が分からないようにする
措置3:報告と対応ルールの策定および周知
報告ルールに含めるべき事項
報告ルールには、報告方法(直ちに報告する等)、報告先、報告内容等を含める必要があります。組織内での適切な報告ルートを定めるとともに、権限の大きい従事者による加害の可能性も考慮し、匿名通報窓口の設定も重要です。
対応ルールで定めるべきポイント
報告を受けた後の対応ルールでは、以下の点に留意します。
- 対応する責任者をあらかじめ定めておく
- 複数の者によるチーム対応とする
- おそれがある段階から重く受け止めて対応する
- 報告者と報告内容に関する秘密保持を徹底する
- 相談や報告を行った者に不利益な取扱いをしない
相談体制の整備も法的義務
事業者内外の相談窓口の設置
法第5条第2項等に基づき、事業者は児童が容易に相談を行えるよう、以下の措置も実施しなければなりません。
- 事業者内における相談員の選任又は相談窓口の設置と周知
- 外部相談窓口(24時間子供SOSダイヤル、こどもの人権110番等)の児童と保護者への周知
複数の相談先から選択できるようにすること、匿名で相談できることを明示すること、相談後の対応の流れを児童に示すことが、相談のハードルを下げるために有効です。
まとめ:早期把握は児童の安全を守る第一歩
日常観察、面談やアンケート、報告ルールの策定という3つの措置と、相談体制の整備は、こども性暴力防止法が事業者に求める安全確保措置の基盤です。これらを形式的に整えるだけでなく、実効性のある運用を行うことが児童の安全を守る鍵となります。こども性暴力防止法の概要もあわせてご確認ください。
※本記事の内容は、令和8年3月29日現在における下記の資料に基づいたものです。
・こども性暴力防止法施行ガイドライン
・横断指針